いよいよ始まった「第46回 東京モーターショー 2019」は、かつての栄光を取り戻せるのか?

雑多記事エッセイ

隔年で開催されている自動車などの大規模展示会「東京モーターショー」。昨日のプレスデーが開催されており、本日(10月24日)のオフィシャルデ−などをはさみ、明日14時よりいよいよ一般公開が始まります。

と言うか、既にニュースでも大量に動画が出回っていますので、ご存じの方も多いですよね。

以前記事にしたこともありますが、東京モーターショーはかつての輝きを失いつつあり、年々(隔年々、か)来場者数が減少しつつあります。主催者は前回の77万人から、大きく100万人を目指すとしていますが、それは果たして可能なのでしょうか?

スポンサーリンク

自動車はコモディティ化した商品になってしまったのか?

昔は自動車と言えば、社会人になって最初に買いたい商品の筆頭でした。憧れの対象であり、なくてはならない物でもあり、だからこそ時には借金をしてでも欲しい車を買うことは、多くの人にとって当たり前のことだったように思われます。

しかし今では地方では相変わらず必須の物ではあり続けていますが、都市部を中心に最早無用の長物と化しつつあり、同時に「憧れの物」から「生活の道具」になってしまいました。トヨタ、ホンダ、ニッサン、マツダなどのメーカーに対するロイヤリティもすっかり下がってしまい「安ければいい」とか「デザインがよければ」「使い勝手が優れていれば」「燃費が良ければ」というように、機能にのみ注目が集まるようになっているように思えます。

それはつまり車という商品がコモディティ化したとも言え「どこで誰がどのように造ったのか?」などは関係なく「その時々で優れていると思われるものを買う」という消費行動に変わってきているということなのではないでしょうか。

どうしてこうなったのかと言うと、よく言われているように「製品が行き渡ったこと」「代替手段が普及したこと」「格差が広がっていること」などが挙げられると思われます。つまり「欲しい人は既に皆買っていて」「地下鉄や電車などの交通網が発達し」「お給料が減っている」ということですね。

2番目のものは地方都市ではまだまだ十分とは言えず、そのお陰で(?)まだ車を保有するという価値観が残っているわけで、これは恐らく当面解消されないと思われます。全国津々浦々まで全て公共交通機関を張り巡らせるというのは、当然無理なことであり、解決策としては「過疎地には住まず、住宅を密集させる」という手段を取る必要があると思うのですが、これはまた別の話なので割愛します。

まぁ要は「車要らなくない?」と考える人が増えてきたということですね。もしくは「なんでもよくない?」という感じでしょうか。

ですので、車という商品がどれほど頑張っても、タイヤが4つ付いて地面を走っている限りは、かつての栄光を取り戻すのは難しいというのが私の意見です。強いて言えば電動化と自動運転が次の転機になりそうですが、どちらも車の楽しさと相反することのように思えるので、市場としての車は盛り返すかもしれませんが、コモディティ化は解消できないでしょう。

なぜ東京モーターショーは世界5大モーターショーの座から陥落したのか?

正式に「世界5大モーターショー」というものが定義されているわけではなく、あくまでも「そう言われている」という話なのですけど、Wikipediaを見ると世界5大モーターショーは以下のように記述されています。

・東京モーターショー
・フランクフルトモーターショー
・北米国際オートショー(デトロイトモーターショー)
・サロン・アンテルナショナル・ド・ロト(ジュネーブモーターショー)
・モンディアル・ド・ロトモビル(パリモーターショー)

Wikipedia「モーターショー」より引用

ですが近年では東京モーターショーに変わり、中国で開催されている「北京モーターショー」「上海モーターショー」の方が主力となりつつあり、またタイの「バンコクモーターショー」やフィリピンの「マニラモーターショー」インドネシアのジャカルタでの「インドネシアモーターショー」なども注目を集めつつあります。

海外メーカーの減少してきていて、そういう意味でも世界的に重要度が落ちてきているという見方もできてしまいそうです。

ではどうして東京モーターショーはかつての輝きを失ったのか?

まず第一には上に書いたように「国内市場の変化」が挙げられると思われます。消費者がかつてのように自動車に夢を見なくなったこと、そして必須の商品ではなくなったことによる販売台数の伸び悩みです。実は国内の自動車販売台数自体は、そこまで大きく落ち込んではいないんですよね。

JAMA(一般社団法人 日本自動車工業会)が出しているデータがありましたのでご紹介します。

これを見ると、ピークは1990年の510万台。そこから緩やかに減少していき、2011年辺りには350万まで落ち込みます(2008年にリーマン・ショック、2010年くらいにギリシャを発端としたEUの経済危機があったので、その影響でしょうか)。

ただその後は持ち直し、2017年では430万台と安定したペースには戻っているんですよね……と言いたいところなんですが、世界的に見ればそんなに大きな規模ではないんですよね。再びJAMAのデータを見てみましょう。

2017年のデータで比較すると

販売台数(単位:万台)
日本523
アメリカ1,758
中国2,912
イギリス296
ドイツ381
フランス260
イタリア219
スペイン145
インド402
韓国180
ブラジル224

こんな感じになります。日本の販売数が先程のデータと異なるのは、あちらは乗用車のみ、こっちはトラック、バスまで含めた数字だからです。

主要国の中では第3位を堅持している……とも言えますが、ドイツやフランスなどはEUという経済圏で見れば大きく日本よりも大きな市場になっていますし、やはりアメリカの巨大さは絶大ですね。

そして何と言っても中国。日本の6倍近くという規模は、既に比較対象にすらならないのかもしれません。やはり人口が多いのは正義ということでしょうか。そういう意味ではインドもまだまだ伸びる余地は十分にありそうです。

これを見れば分かると思いますが、海外メーカーからすれば「日本に新車を持っていくより、今後発展しそうな所の方がいい」と思うのは自然なことだと思われます。もちろん巨大市場であるアメリカは外せませし、ヨーロッパメーカーにとってはお膝元のEU圏(つまりジュネーブとパリのモーターショー)は必須でしょう。

加えて日本は世界でも類を見ないほどの自動車メーカー大国で、一部の再編はありましたが現時点でも乗用車だけで8メーカーも存在しています(自動車工業会会員なら14社)。

つまり海外メーカーにとっては「東京に行くお金があったら上海に行く」というのが極当たり前のことなんですよね。

どうしたら東京モーターショーは復権できるのか?

暗い話が続きました。気分を変えて「どうしたら東京モーターショーは復権できるのか?」を考えてみましょう……と言っても、既に各自動車メーカーなどの頭の良い方々が必死で考えているわけであり、私が考えたことはただの机上の空論になってしまいそうです。

でも「中にいないからこそ言えること」もあるのではないかと思い、敢えて考えてみます。

まず今回の東京モーターショーで新しい取り組みとされている「体験型のコンテンツ」は、私は非常に素晴らしいと思います。モーターショーと言えば台座の上に飾られた新車がクルクル回っていても、係員さんに「触らないで」と言われることが多いですよね。

「見てるだけ」でも楽しめる人は一定数いると思われますが、やはり触って体験するというのは何事においても大切なことだと思います。今回はないようですが、コンセプトカーなどはガンガン触ってドシドシ乗れるようにすればいいと思います。もう高嶺の華の存在じゃないんですから。

それに関連するのですが、東京モーターショーのサイトを見ていて思ったのは「相変わらずドリフトだとかやってんのか」ということです。私自身モータースポーツは大好きなので、もちろんそういう体験ができるのであれば(同乗ですが)したいと思いますけれど、今更感があるのも事実です。

自動車メーカーが「車の楽しさ」を語るとき「運転する楽しさ」を全面に出しますが、それは「スピードを伴うもの」だけじゃないはずです。安全な速度域でも、つまり公道で安全に楽しめるということを、しっかりと伝えて欲しいな、と思うんですよね。

まぁ、確かに私のようなおっさんは「○○○馬力っ! 凄いっ!!」とか言っちゃいますから、それが問題なんでしょうけど。

運転する楽しさ以外では「それを持つことでライフスタイルが変わりそうな予感」を感じさせてくれるものが重要に思えます。やや肩透かしになりつつありますが、Amazon Echoなどスマートスピーカーが出たときに多くの人がそういうことを感じたのではないでしょうか?

そういう意味では「Honda e」は、個人的に少しだけ「いいな」と感じました。車自体は何の変哲もない、いわゆる電気自動車ですが、インテリアが素晴らしい。もう少しぶっ飛んでもいいのではとも思いましたが、まぁ現実的にはこのくらいに落ち着くのでしょうか。

自動運転とかは法整備とか道路の整備なども必要になってくるので、まだまだ本格普及には程遠い(特に日本では)と思っています。でも電気自動車なら、既に日産や三菱が造っていますしね。それらはまだ「自動車」という体を多く残していますが、Honda eはそこから少しステップアップしているのがいいですよね。

そんなふうに「自動車の楽しさ」を従来のように「車の運転の楽しさ」だけでなく「生活を変えてくれる」というものに変えていくことが、今後の自動車が再び輝けるかどうかになるのではないでしょうか。そしてそれは、東京モーターショーの復権に繋がっていきます。

日本メーカーが東京モーターショーで、世界を変えるような自動車(空を飛ぶ自動車とかじゃありません)を展示できるようになってくれば、海外からの注目も集まりそれが再び5大モーターショーの舞台へと押し上げることになると思います。

まとめ

今回は自動車についてのお話でしたが、これって小説でも同じことだと思うんですよね。

時代は変わっていきます。昔の読書や執筆の楽しさが、これからの楽しさになるとは限りません。「昔はこうやって楽しんでいたもんだ」という体験談を、これからの時代の人に押し付けるのは、大人の自己満足になるだけでしょう。

過去のことを全否定する必要はないかもしれませんが、その中で新しいことを追い求めていく必要はあるのかもしれません。