30年来のホンダオタクが、ホンダ車を買わなくなったワケ
今日のニュースで『ホンダ、研究所を大幅縮小 四輪の開発機能を本社に統合』というものが流れていました。
独立した機関であった『本田技術研究所』
ニュースソースは当分見ることができますが、Yahoo Newsは時間が経つと削除されちゃうので、どういうニュースかというのを書いておきます。
「ホンダ」と言われる会社は「本田技研工業」と「本田技術研究所」の2つあり、一般的に「ホンダ」と言われるのは前者になります。
本田技術研究所は言ってみれば、ホンダ製品の開発拠点であり、ホンダの共同創設者とも言える藤沢武夫氏によって設置されました。
今回のニュースは、この研究所内の「四輪開発部門」を本田技研工業側に組み込むというものです。
元々、本田技術研究所が設立された理由は「業績などに左右されない研究開発を持つ」ことだったと言われています。
企業であれば当然売上は大切なのですが、目先の売上だけを追っていてはいい商品はつくれません。また売上至上主義になってしまうと、いわゆる「マーケットイン型」の商品開発になりがちで、エポックメイキングな商品開発はできにくくなってきます。
ですので、開発を本田技術研究所に分社化し、本田技研工業はそれを販売。売上の一定額を(確か5%くらい)を研究所に返すという仕組みが取られていたんですよね。
面白いのは、この研究所をつくったのは先程書いたように藤沢武夫という人物。藤沢氏は、本田宗一郎と共にホンダを一からつくり上げてきた共同経営者です(実際には専務)。
技術は本田宗一郎、経営は藤沢武夫という両輪経営だったわけですが、経営側の藤沢氏が開発部門である研究所の分社化を進めた辺りが、面白いと思うんですよね。
兆候はあった
いずれにしても、この「開発・販売」の両輪でホンダはずっと上手く行っていたということに違いはありません。
ただ、今回のニュースの兆候は随分前からありました。
まず(確か)2015年に就任した現社長である八郷隆弘氏。よく知られているように、八郷氏は「本田技研工業社長ではない、初めての本田技研工業社長」です。
本田宗一郎から始まり、7代目の伊東社長まで本田技研工業の社長は、必ず本田技術研究所の社長を務めてきました。
八郷氏はヨーロッパや中国など海外赴任が多い方です。よく誤解されているようですが、ホンダR&Dアメリカズ上級副社長、ホンダR&Dヨーロッパ社長(R&D=Reserch&Development、研究開発)なども務めており、本田技研工業の開発部門の出身者ですから車体開発のエキスパートではあります。
この八郷氏が技研の社長に就任したことにより、研究所出身ではない社長が誕生したというわけですが、これは今回のニュースの布石であったと見るべきでしょう(研究所の機能を技研に取り込むことが目的で、という意味ではない)。
また、昨年には研究所の二輪R&Dセンターが、技研の二輪事業本部に統合されています。
これらから四輪も同様の道を辿るのは時間の問題だったと言えそうです。
悪いことばかりではないはず
今回のニュースはとかく悪い印象を与えそうですが、私はそんなことはないと思っています。
技研と研究所の関係は「研究所が基礎となる技術(エンジンやシャシ)を開発し、それを使って技研が商品開発をする」という感じなのですが、前述したように独立した研究機関は業績に左右されない開発ができる一方で、一貫した商品開発には向いていません。
技研のR&Dからすれば、研究所の開発した技術をつかって商品開発をしなくてはいけないわけで、自分たちがつくりたいものとの乖離が生じてしまう可能性もあります。
ですから、今回の組織変更は「ひとつの車という商品を上流から下流まで統合した組織でつくり上げる」という意味では、有用なのではないでしょうか。
度々言われていることですが、ホンダの製品(特に四輪)は「技術至上」な部分があります。例えばタイプRのような製品はそういう側面を持つことも商品価値としてはありかもしれませんけど、一般的な商品ではオーバースペックな部分が出てきてしまいます。
今回の施策が、本当の意味でのホンダらしいプロダクトアウト商品をつくることができる目的であるのならば、ホンダファンとしては諸手を挙げて賛成すべきことだと思います。
現在のホンダは
さて、ようやく今回の記事タイトルの話に参りましょう。
私は中学生の頃からのホンダファンでした。当時は、第二期ホンダF1参戦真っ只中で「16戦15勝」を飾った1988年などもリアルタイムで見ていた世代です。
ホンダ関連の書籍を読み漁ったり、スクラップ置き場からホンダマークをもらってきたり、挙句の果てにはホンダ車のラインナップはグレードも含めて諳んじられるほど、ホンダに傾倒していました。
買った車も当然ホンダ車ばかりで「ホンダにあらずは車にあらず」といった感じ。
それほどの狂信的ホンダファンだった私ですが(ファンというより信者)、ここ数年はホンダ車には魅力を感じなくなってしまいました。
ホンダのサイトを見ても「欲しいな」と思える車はおろか「まぁ、これなら」と思える車すらありません。強いて言えば、先日発表になってもうすぐ発売予定の新型Fitはちょっとだけいいかな、と思ったりしていますが。
後はモーターショーに出ていたhonda eは結構いいかも、とは思いました。
よく「最近はホンダらしさがない」と言われますけど、そのホンダらしさって何だろう? って考えたんですよ。
もちろん人によりけりな部分はあるでしょうけど、私は「トヨタでは出せない車をつくる」ということじゃないかなぁと。
トヨタの部分は別の会社に置き換えてもいいんですよ。要は「他のメーカーでは、絶対出せない奇抜なものをつくる会社」がホンダだということ。
これは別にタイプRに代表されるようなスポーツカーだけを指しているわけではなく、古くはシティとかクリエイティブムーバーと呼ばれていたオデッセイ、CR-V、SM-X、ステップワゴンなども含まれると私は思います。CR-Xデルソルやビート、Zなんかも特徴ある車でしたね。
で、こういう車って一部を除いては売れなかったんですよ。人気があったのは、クリエイティブムーバーの初期くらいでしょうか。
売れない車は商売的にはなくすべき。それは正しいと思います。
でも、売れなかった個性的な車があったからこそ、ホンダはホンダらしかったとも言えると私は思うんですよね。
言い換えれば売れない車は、プロダクトアウトからつくられた車(開発者が「これはいいぞ」と思ってつくった車)とも言えそうです。
売ることをメインに考えると、商品はマーケットインでつくられるようになりがちです。マーケットを調査して「お客様はこんな車を欲しがっています」というのは、非常に説得力がありますからね。
「商売は売れないとダメ」なのは確かなのですが、そのために売れる車だけを用意しようと思うと、今の日本では軽自動車がメインになり、乗用車は他の地域で併売できる車種のみになってしまいます。
現に今のホンダのラインナップを見てみると、軽自動車はNシリーズとS660。乗用車は一部を除けば海外メインの車ばかりになっています。シビックなんて1グレードしか用意されていなんですよ(セダンとハッチバックでそれぞれ1グレードのみ)。
正直なところを言えば「それならトヨタを買うわ」となってしまいます。個性が欲しければ、海外メーカーのモデルでもいい。ちなみに私は一時期BMW Miniを買おうかと本気で考えました。
ホンダオタクの琴線に触れるには
先程書いたように、私はホンダに対して信仰に近いほどの感情を持っていました。
そのくらいの人間でもホンダに対して興味が薄れつつあるのですから、一般の方がホンダというブランドに対する気持ちは推して知るべし、です。
無論、まだ信仰を失っていない方も多くはいらっしゃると思いますし、私自身も「ホンダ嫌い」になったわけではありません。F1は応援していますし、ホンダが他の会社と合併するようなことがあれば悲しく思います。
でも「絶対次もホンダの車を買うんだ!」という気持ちにはなれません。
ただバイクはホンダを買ったんですけどね。クロスカブ110ですが、あれはなかなか良いバイクです(ハンターカブが出るという情報は聞いてましたが、私の使用目的ではクロスカブが適切だと思って買っちゃったんですけど正解でした)。
将来的には通称ニダボ、CBR250RRを買いたいなぁと思ったり、レブルなんかもカッコいいなぁとか、やっぱりCB400も欲しいなとか、バイクについては結構欲しいものだらけなんですよね。
この違いはやはり「ホンダが好きな人が欲しいと思えるものをちゃんと作っているか?」になってくると思います。
特に太字にした部分。これが大切。マーケットリサーチとかじゃなくて「ほら、こういうのが好きなんだろ?」と提示できるかどうか。
まぁ、二輪は多くが「過去の名車をリバイバルさせたもの」だったりするので、それはそれで微妙なのですが、それでも四輪に比べるとまだ「欲しいもの」が揃えられていると思います。
後は価格。
これはまぁしょうがない部分もあるとは思うのですが、軽自動車だってアレコレ付けると200万くらいする時代ですからね。日本人の平均賃金が上がっていかない現代ではしょうがないんでしょうけど……。
不思議なのは平均賃金はそんなに増えてないのに、なんで車の価格だけが上がっているのか? 他のもの、例えば食料品だったり衣服などは、そんなに高くなっていないような気がするんですけどねぇ。
ハンターカブみたいにタイなどで生産すればよい……というのは、国内産業的視点から言うとちょっと乱暴かもしれません。でも、そういうラインナップもあっていいのでは? と思ったりもします。
価格は専門家じゃないのでこのくらいにしておき、それ以外のこと「じゃぁ、どんな車を出すのがホンダらしいのか?」という部分に触れると、これはもう「化石燃料以外の車」ということになるのではないでしょか?
ホンダもFCV(燃料電池車)はやっていますし、EVもやっています。どちらも課題があり、前面に出しにくいのはよく分かります。でも、三菱のi-MiEVや日産のリーフなんかは、本来であればホンダが積極的にやるべき車種だったんだと、私は思うんですよね。
FCVは水素ステーションの関係で、ホンダ単体ではどうにもならない。でもEVならそうじゃなかったはず。もちろんi-MiEVもリーフも走行距離やメンテナンスコストの関係で、経済的優位性はほとんどないと思われます。
でもそういう理屈じゃなくって「新しいことは、いつもホンダがやっている」という姿勢が、ホンダのブランドには大切なんじゃないかと思うんですよ。プリウスが出てきたときも「これはホンダがやるべきだった」と思っていました(インサイトを出してボッコボコにされちゃいましたが)。
ま、なんだかんだ言ってホンダはやってくれると私は信じています。
そのうち
ホンダ「ほら、これが欲しかったんだろ?」
しろもじ「キャインキャイン、ホンダさまぁ、それですそれです! すぐに貯金を下ろしてきますぅぅぅ!!」
という日が来ると信じています。
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コメント一覧
ホンダといえば、スポーツモデルが思い浮かびますよね? オールアルミボディで、指定工場でしか修理が出来ないというとNSX。
当時、FF車世界最速と言われたインテグラ タイプR(のちにシビックもタイプRが追加され、どちらがFF世界最速なの? とか、思ったりしましたが)。
オープンツーシーターの軽自動車ビート。これ確か排気量550ccですよね? それって戦前の規格なんじゃないの?
ホンダ車って、10年近く乗ってると、あちこちガタが出てくるイメージがあったなあ。
ブルドッグと言われたシティターボなんて、モータースポーツのクラスでは、かなり性能が高かったそうですが、ボディ剛性が足りてなくて、競技中にリアのドアが開いたりすることもあったとか。ガムテープ止めるのが必須だったらしいよ。ジムカーナとかダートトライアルでは、かなり人気あったみたいですね、ブルドッグ。ホンダには珍しくターボがついていたのも特徴的でした。
私は、トゥディに乗ってたことあって、エンジンが良く回る中々軽快なクルマでした♪
ホンダといえば、なんといっても『Vテックエンジン』ですか? 確か『可変吸気バルブタイミングシステム』だっけ? 名前がかっこよくて憧れましたね〜♪
私も、その時代のクルマ(スポーツモデル)のことだったら、ある程度わかるのですけれど、最近の車はよくわかりませんね〜。
ゆきさん、こんばんは。
お返事が遅くなってすみません。
シビックRは1.6L、インテRは1.8Lなのでインテグラの方が高性能だったんですけど、サーキットによってはシビックの方が速かったりしていましたよね。
ブルドック、懐かしいですね。欲しかったんですよねぇ。
「ホンダ車のボディはおまけ」と言われていたりしましたよね(笑)。
グランドシビックに乗っていましたけど、あっちこっちでギシギシ音が鳴りっぱなしでした。
トゥディも速かったですよ。今でもYoutubeなんかで検索すると、有名な動画があったりしますし。
VTECはたしかに良かったんですが、一般道では意味がない装備でしたね。
まぁ、その辺りもホンダらしさなんだとも思いますけど。
おっしゃる通り、当時は憧れの存在でした。
特にタイプRの赤いヘッドカバーなんて、思わずうっとりしてしまいそうになるくらい(でも古くなると、剥がれちゃうんですよね、あれ)。
同じく私も、最近の車はさっぱりです。
一応、ホンダは新車が出たらチェックはしていますが「これはいいぞ」というのがないんですよね。
本文中にも書きましたが、バイクの方が多いです。
もしかしたらバイクにならって、四輪でもリバイバルブームがやってくるかもですね。
個人的には、書いて頂いてるシティターボか、シティカブリオレ辺りを復刻して欲しいなと思っています。