ブラック企業はなぜ生まれるのか?
こんばんは、しろもじです。
少し前の記事ですが、このようなものが文春オンラインさんに掲載されていました。
大手アニメーション制作会社の社員さんが、月間390時間を超える労働時間を強いられた挙げ句倒れ、ブラック企業ユニオンに加入し団体交渉を申し入れたというニュースですね。
一時期騒がれていたので、ご存知の方も多いかと思います。
個別の案件に関しては、詳細が分からない以上あまりいい加減なことを言うわけにはいきませんが、それにしても世の中にはブラック企業というのが蔓延しているよう感じられます。
そこで今回は「なぜブラック企業は生まれ、一向になくならないのか?」について考えてみたいと思います。
ブラック企業の定義とは?
まず「そもそもブラック企業とは何か?」ということを考えてみましょう。
ネットで「ブラック企業 定義」で検索したところ概ね
- 法令を無視した労働時間(長時間労働)
- 労働に対して正しい賃金が支払われていない
- 色々なハラスメントが横行している(パワハラ・セクハラなど)
にまとめられると思われます。
法定労働時間の上限は「1日8時間、週40時間」です。
つまり20日出勤する月であれば160時間/月。
これにプラスして
発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合。あるいは発症前1ヶ月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合。
Wikipedia「過労死ライン」より引用
というのが過労死ラインとされていますので、これ以上の労働を強いている場合は十分ブラックと言えるでしょう。
賃金に関してはまず「時間外労働に対して残業代が適切に支払われているのか?」という点でしょう。
中小企業にとってはとても心強い「みなし残業代」という制度もありますが、これも「支給金額÷労働時間」で計算したとき、都道府県の定める最低賃金を下回るのであれば、立派に違法と言えるのではないでしょうか。
本当は「本給とみなし残業代を別々に計算」する必要があるのですが、中小企業では「うちは基本給にみなし残業代がコミコミだから」と、定額使い放題を堂々と宣言する会社って多いんですよね。
ハラスメントについては難しいところで、セクハラは論外ですがパワハラについては難しいところがあると思います。それについてはちょっと長くなってしまうので文末に記しておきます。
まとめると「超時間労働、低賃金、ハラスメントが横行している企業はブラック企業」ということですね。
なぜブラック企業は生まれるのか?
次になぜブラック企業が生まれるのか考えてみましょう。
世の中には「誕生したときからブラックな企業」というのもあると思います。
これは完全に社長自身がブラックなので、最早議論するに及ばないと思われます。
つまり最初から「労働者を低賃金で長時間こき使って、利益を上げてやろう」と目論んで企業しているわけですから、そもそもが犯罪的な存在になります。
一方で「いつの間にかブラックになっていた」という企業もあると思います。
これにはいくつかのパターンがあるように思われます。
ブラック企業になるパターン1「スタートアップから拡大していく企業」
人には「これが好きで好きでたまらなく、何時間やっても苦痛じゃない」というものがあります。
ここをご覧の方であれば「小説を書くこと」でしょうか?
小説では話が膨らまないので(一人でできちゃうので)「文章を書くのが好き」としてみましょう。
文章を書くのが好きで、小説を書いたりブログを書いたり、一日中PCの前でキーボードを叩いてても大丈夫な人がいます。
彼はそれが大好きなので、寝る間も惜しんで文章を量産していきます。
そしてそれが仕事になりました。
仕事は順調に増え、自分ひとりではどうしようもなくなってきました。
そこで彼は会社を作り、手伝ってくれる人を募集しました。
何人かの人が応募してくれ、彼らは小さい会社を大きくしようと頑張りました。
何年か後に、彼らの努力もあって会社はそこそこ大きくなってきました。
従業員も増えてきました。
そうなってくると、創業当初からいたメンバーと、最近入ってきたメンバーの間で考え方の違いが出てきました。
創業メンバーは自分たちが頑張って大きくなった会社をもっと大きくしたいと思っています。
一方で途中から入ってきたメンバーは「自分の時間も大切にしたい」と主張しています。
創業メンバーはそんな考えが理解できず、彼らに長時間労働を強要するようになりました。
「僕らはずっとこうやって頑張ってきたんだ。君たちもそうあるべきだ」
このパターンの会社で働いたことはないのですが、外部から見ていたことはあります。
個人的にはどちらの言い分も理解はできるんですよね。
誤解を恐れずに言えば、確かにスタートアップのときには「多少の無理」は必要だったりします。
ただやはり「大きくなり従業員が増えるということは、経営者の責任も大きくなる」ということを理解していないとダメでしょう。
人が増えると色々な価値観の人が出てきます。
「ウチはずっとこうだから!」では通用しなくなる日がやってきます。
ブラック企業になるパターン2「従業員自らがブラック化に貢献する」
これは……経験談です。
自分で自らブラック化していく。
自分の仕事が面白いから「時間なんて関係ありません」と自ら長時間、低賃金で喜んで働く。
場合によっては「やる気搾取」のようなパターンもありますが、いずれにしても自らの判断です(洗脳するようなのは違いますが)。
これは従業員が悪いと言えば悪いのですが、たがをはめない会社も悪い場合もあります。
前に務めていた会社では、社長が「もう帰れ」と言い続けていたんですよね。
「仕事を大切に思ってくれるのはありがたいが、それ以上に自分の時間を大切にしろ」と言ってくれてました。
そういうトップがいる会社では、多少ブラックよりに振れることはあっても、壊滅的なブラックにはなりにくかったりします。
ブラック企業になるパターン3「人手不足によるブラック化」
これは最近よく見るパターンです。
特に条件の厳しい中小企業には人は集まりません。
人が来ないので、従業員に負担が集中します。
すると従業員が辞めていきます。
残った人は更に負担が増えます。
かつては募集すれば放っておいても人来る時代もありましたが、現在は余程の好条件でない限り人は集まりません。
じゃぁ条件を良くしよう、となるわけですが、中小企業にはそんな余力はありません。
余力はないのですが「とにかく人を集めないと」と募集ばかりを繰り返します。
本来は「従業員が辞めていく」のを止めるのが再優先事項(つまり現状の待遇を改善する)なのに「集めること」ばかりに注力します。
穴の開いたバケツに必死で水を注ぐようなもので、冷静に考えればそれが如何に無駄なことなのか分かりそうなものですが、なかなか中の人には分かりにくいんでしょうね。
待遇を改善する > 従業員のES(従業員満足度)が向上する > 口コミで人が増える
これを読んで下さっている方々は「そんなの当たり前だろ!」と思われるかもしれませんけど、実際こういうことを「分かっていても改善できない会社」「分かってない会社」って多いんですよね。
なぜブラック企業はなくならないのか?
いくつかのパターンでブラック企業が生まれる原因を考えてみました。
その他にもあると思われますが、現時点で私が知っていることは以上になります。
では今度は「これだけ騒がれているのに、どうしてブラック企業はなくならないのか?」ということを考えてみましょう。
1つ目には「それでも働く人がいるから」ということが挙げられると思います。
日本は好景気だと言われています。
バブル景気のときもそうだったのですが「好景気=みんながお金持ちになれる」ことではありません。
いや、本来はそうあるべきなのですが、実際にはお金は満遍なく対流することはなく偏る傾向があります。
バブル期よりも格差が広がった現代では、それはより顕著になっているように感じられます。
例えば「時給1200円くらいはなんとか払えそうだけど、900円で募集しても人が来る」という状態であれば、企業は900円しか払いません。
本当の意味で「景気が良い状態」というのは「いや、うちは950円払う」「それだったらうちは1000円」「こっちは1100円にするぞ」という状態になることです。
たまに実家に行ったときに新聞折込の求人チラシを見ることがあるのですが「820円」とか「850円」という時給が結構あります。
記事執筆時の岡山県の最低賃金は807円ですから、ほぼ最低に近い求人と言っていいでしょう(これでも去年に比べると25円上がってるのだそう)。
「それでも働く人がいるから」というのは、言い換えれば「実際にはそれほど景気がよいとは言えないから」ということです。
これは議論が分かれるかもしれませんが、先程言った「本当は1200円なら払えるんだけど」という状態で900円で働かせるというのは、企業が300円を搾取しているという見方もできます。
まぁ「銀行という企業にとってのセーフティネットが、思っていたよりも頼りにならないということが判明した結果、企業が内部留保という保険をかけている」という考え方もできますので、一概に企業が悪いとは言い難いのですが。
2つ目には「企業のトップ(経営陣)が悪い」というもの。
これは常々思うのですが「自分の会社の社員が、月間390時間以上も働いているのを知っていて、それをなんとも思わない」というのは、トップとしてどうなんでしょうね?
労働時間が過労死ラインに乗っているというのをトップとして容認しているのは、最早普通の感覚をもった人間とは言えないと思います。
お金の話をすると、残業代をキチンと払わないのもトップに問題があるでしょう。
私は会社のトップにはなったことはありませんが、事業体のトップにいたことはあります。
その際、社員に時間外給を与える権限はなかったので彼らはできるだけ時間内で帰すようにし、アルバイトには厳格に時給を払っていました(例えば15分超過したら、もう少し雑用させて30分の時給を払う)。
中には上のように「いいですよ、自分がやりたいんで」と無給で働こうとしていた人もいましたが、正直「ハラハラ」していました。
以前、若い頃日本マクドナルドと関わっていたことがありました。
日本マクドナルドの創業者の藤田田氏は「ドライな性格、拝金主義者」などと呼ばれて、あまり尊敬の対象にならない経営者として見られていましたが、中から見ているとそうでもなかったんですよね。
彼は「日本最高の賃金を払う」と宣言しており「従業員に賃金を払いすぎて潰れた会社はない。会社が潰れるのは経営者がボンクラだからだ」と言っています(うろ覚えなので、やや言葉は異なるかもしれませんが文脈は合っていると思います)。
無論、氏は仕事には大変厳しい方でしたが、私の知り限り従業員で彼の悪口を言う人はいなかったんですよね(全盛期のころの話です)。
結局の所、ブラック企業になるかどうかはトップ次第です。
「労働時間を守って、給料をちゃんと払ったら潰れちゃうよ」というのなら、もうその会社は潰れた方が社会のため……とは言い過ぎかもしれませんが、そうならないようにするのがトップの仕事でしょう。
逆に言えば「キチンと法を遵守し、キチンと給料を払うこと」以上に大切なことはないわけです。
なので、個人的な見解を言えば「トップが変わろうとしない会社は、絶対に変わらない」ということです。
まとめ
今回は「ブラック企業はなぜ生まれるのか?」ということを考えてみました。
結論は先程も書きましたが「ブラック企業はトップ(経営陣)が悪い」ということになります。
では私たちのような従業員として働く身としては、どうしたらいいのでしょうか?
以前「ブラックなら逃げ出した方がいい」というような趣旨のことを書いた覚えがあります。
それ自体は間違っていないと、今でも思っています。
ただ最近思うことは「まだ日本は転職者には厳しい」ということです。
アメリカなどでは「転職してない人は無能」と見る向きもあると聞きますが、残念ながら日本では「どうして転職したの?」と聞かれるのが現状です。
最早終身雇用など、一部を除いて崩壊してるのにも関わらず、です。
なので「余程のブラックならばとっとと転職した方がいい(前述の過労死ラインを超えるような場合)」のは間違いないですが「ゆるいブラックならば、少し考えた方がいい」とも思います。
ここでいう「考える」とは「諦める」のではなく「転職先を吟味した方がいい」という意味です。
転職した先がまたブラックだった場合、再び転職を余儀なくされます。
それを繰り返していくと、自分の価値はどんどん下がっていきます。
人間は現状を悲観的に見がちです。
知っている人に「全然忙しくない公務員でお給料もそんなに悪くないけど、人間関係がイヤで民間に転職した」という人がいます。
結局、民間に行った結果、お給料は下がりノルマという重圧が増え、人間関係は良くなったものの半年程度で挫折してしまいました。
私から見れば元の彼の職場は「どう見てもブラックではない」と思えていたのですが、「隣の芝生は青く見える」の言葉の通り、自分以外の環境はよく見えるものです(私が彼のことを見ていたことも含めて)。
その辺りをしっかり吟味した方がいいということですね。
特に昨今よくある「フリーランサーになって自由な時間を手に入れる」とかいうのは、気をつけるべきでしょう。
確かに本当に自由気ままに暮らせている人もいるのも確かですが、そうでない人も多くいるのもまた確かなことです。
【補足】パワハラについて
あくまでも個人的な見解ですが「部下を叱る」ことがパワハラに直結するとは思っていません。
「いいよーいいよー、大丈夫だよー」だけでは、確かに仕事は成り立たないのも確かです。
私自身もパワハラに該当することをしたことがあるので(されたこともあります)、この話はあまりしにくいのですけど、私がパワハラだと思うのは
- 長時間に及ぶ叱責
- 仕事以外の個人的な攻撃
のふたつです。
(暴力などはパワハラ以前に犯罪ですから、ここでは除外します)
つまり、ミスをしたとき「こらっ!」と怒ったとしても、それはその場だけのものにする。
後でちゃんとフォローする。
感情で怒らない。
他の人を巻き込まない。
容姿、性格に言及しない。
そういうのをしっかりしていれば、それはパワハラには当たらないのだと思います。
私のときは「あまりにも何度も同じミスを繰り返す部下がいたので、つい感情的になってしまった」というミスをしました。
若気の至りと言えばそうなのですが、まぁ恥ずかしい過去ですね。
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