日本のエンターテイメントは、次の10年をどう戦っていくべきか?

小説LABO創作者向けニュース

ちょっと前の話ですが3月5日のNHKクローズアップ現代+にて『どうなる?日本のマンガ・アニメ〜中国 急成長の衝撃〜』というものが放映されていました。

現時点では同放送を観ることはできないのですが、上記リンク先(公式サイト)から概要は読むことができます。(そのうちNHKがネット配信されるようになると、誰でもいつでも観られるようになるのかな?)

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中国のアニメ製作現場が変わってきている?

番組の内容をかいつまんでお話しすると

  • 集英社のマンガアプリ「ジャンプ+」に、中国人漫画家の作品が掲載されており、人気を博している
  • ジャンプ+の編集長によると「ここ数年の間に、世界に通じるような才能を持った漫画家が生まれるのでは?」
  • 中国のアニメ産業の規模は、2017年で約2兆5,000億円
  • 中国で展開している、ある漫画アプリのダウンロード数は2億。ある作品の9ヶ月の累計で37億ダウンロード
  • 中国の漫画家志望者は約100万人で、中国ではまだマイナージャンル(中国の出版社談)
  • 中国政府の国策で自国アニメの振興をしており、2004年には「国産7割、海外3割」2008年には「ゴールデンタイムでの海外アニメの放送禁止」2013年には「毎日少なくとも30分以上の国産アニメ放送の義務付け」などを実施
  • 「日本の原作を中国に発注し制作、日本に納入」という流れが「中国の原作を日本に発注し制作、中国に納入」という流れも出てきている
  • 中国人実業家が日本でアニメ制作会社を立ち上げ、中国国内向けアニメの制作を手がけている
  • その会社ではアニメータやCGスタッフなど日本人クリエイタを積極採用しており、正社員として雇用。ある例では「基本給19.5万円+住宅手当3万円まで(条件がある)、土日休み、残業はほとんどなし」という待遇
  • それでも日本のマンガ・アニメの人気は中国でもまだまだ人気は高い
  • 物語が面白い、中国のストーリーは物足りないとの意見も
  • 日本と中国の共同制作により規制の対象外となり、その動きも出始めている
  • 少年ジャンプ+編集長「5年後、10年後に読まれているジャンプ漫画というのは、今のとは全く違うものになっている可能性がある」

というような感じです。

一番驚いたのが「中国の漫画家志望者が100万人でマイナージャンル」というものです。

以前「小説家になろうの登録者数が130万人くらい。日本の人口では1%でマイナー」と書いたことがありますが、13.8億人の中国では100万人は超超マイナーなジャンルですよね(約0.072%!)。

もし1%の創作者がいたとしたら、1,300万人もいるわけですから規模が違います。

創作者側の規模が違うと言うことは市場規模も違うというわけで、約10倍の人口を持つ中国での活動は無視できない存在になっていくのは間違いないと思われます。

また「日本のアニメの制作を中国に発注している」という話は随分前から聞いてたものですが、その逆が起こってきているというのも興味深い話です。

技術力とは人の力

番組の後半で、ビデオマーケット常勤監査役の方が「文化の積み重ね、スタッフの育成度が、まだ日本の方が一日の長がある」と語っていました。

それはノウハウであったり、アニメやマンガの教育機関などが日本の方が充実しているということを指しているのだと思われます。

それ自体は間違っていないと思います。

ですが、技術力とは人の力です。

かつて日本車が中国に進出していった際、中国では現地のメーカと合弁会社にしないといけませんでした(今でもそうです)。

進出した海外メーカとの合弁で、中国の現地メーカは徐々に力を付けつつあります。まだ日本車の方が品質的に勝っている部分は多いと思いますが、中国メーカの販売している車も年々クオリティを上げてきています。

特許等でがんじがらめにされるはずの工業製品であっても、そのような現状ですから、マンガ・アニメなどの技術などでは、力の差が縮まるのはもっと早いでしょう。

最も怖いなと思ったのが、上の抜粋に書いたように「高待遇でクリエイタを募集している」という点です。

給料面ではそこまで破格とは言えませんが、日本のアニメータのように「月休みが4日ほど。一枚200ほどで描き、月収は10万円程度」な環境からすれば、かなり改善されていると言えそうです。

日本の企業は「仕事で給与の面の話をするのは不謹慎」と言います。

面接で待遇や給与の話をすれば、ほとんどの場合落ちるのではないでしょうか?

その上で「安く使うこと」だけに腐心している側面があります。

一部の大企業を除き、特に地方の中小企業などでは「生涯給料が変わらない」という仕事も珍しくなくなりました。

私もかつて経験したことがあって「しろもじくん、今月から給料アップするから頑張ってくれ」と言われてウキウキしたら「基本給は変わらず、手当で5000円増えて、代わりにみなし残業代がなくなった」ということがありました。

「幹部になったから」という理由でしたが、結果として手取りが下がってしまったんですよね。

それでも会社は「給料を増やした(ドヤ)」と言います(笑)。

アニメータなども「低賃金でもクリエータとして修行できるから」というのが、制作会社の言い分なのではないでしょうか?

これではこの先立ち行かなくなるのは明白です。

創作者にとっては有利なことも

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まぁ、アニメ制作現場や社会の仕組みのことは私がどうこう言っても仕方のないことなので、創作者としてこの流れはどうなのか、という話を考えてみましょう。

創作的にはマーケットが拡大していくのは悪いことではありません。

日本の人口は減少傾向にありますし、今後団塊の世代が異世界へ旅立ち始める10年〜20年後、団塊Jrが転生するであろう30年から40年後に、ガクッと減っていきます。

統計では2050年ごろ(約30年後)には1億人程度になると言われています。

東京都二つ分くらいの人が、日本からいなくなる計算です。

合わせて「余暇にお金をつぎ込める余力」も減っていくと思われます。

無料で読める小説・マンガ・アニメなどから、有料コンテンツに移行していくのは、より一層困難になっていく可能性があります。

ただ、中国などの海外市場に目を向けていくと、それらを補って「余命を伸ばす」ことは可能であると思われます。

キーとなるのは上でも書いた「中国のストーリーは物足りない」という部分です。

創作、特にストーリーというのは、流行り廃りを繰り返しながら、より新しいものへと変わっていきます。

「友情・努力・勝利」はかつてのジャンプの柱でしたが、今ではそれに捕らわれない新しい作品も多く出てきていますよね。

小説(特にファンタジー)で言えば「古典的ファンタジー」から「ややライトなファンタジー」「ライトノベル」「なろう系小説」などへ変異していますし、その内容も数年ごとに少しづつ変化していっています。

ストーリーというのは、そういう「創作活動全体の流れ」の中で揉まれて対流しながら、少しづつ形を変えていくものだと思います。

これは確かに一朝一夕には築けないものであると思います。

「小説家になろう」や「カクヨム」などに投稿されている数多くの小説群は、それらに光明を見いだせるものになるのかもしれません。

だから、創作を行う人間としては、決して暗い未来だけが待っているわけではないと思うんですよね。

日本のエンターテイメントは、どう戦っていくべきなのか?

最後に日本のエンターテイメントは、今後世界とどう戦っていくべきなのか? ということを勝手に考えてみたいと思います。

専門分野ではないので、極々簡単にですが。

まず上記に書いたように「ストーリーなどの強み」を上手く活用することでしょう。

また、アニメの制作に関しても早急に改善を行う必要があるのもしれません。

なかなか難しい問題だとは思うのですが、今のままだと「有望なスタッフは中国企業に流れていく」ということになりかねません。

そのために必要なのは「制作工程を作り変える」ことでしょうか。

「気合と根性」は日本人が大好きな言葉ですが、それだけでは戦えないのは歴史が示しています。

本当はアニメ・マンガ産業だけでなく、日本全体が変わらないといけないのでしょう。

一日に何通もFAXをやり取りしておいて「人手が足りない」という感覚を見直すべきです。

折角ITという技術があるのですから、省力化できるところは省力化し、その分給料面で待遇改善を図るべきです。

と言っても、これもなかなか難しい問題なんですよね。

とある地方企業などに「連絡はメールにして下さい」と言ったところ「メールはできない人がいるので、FAXで」と返されりします。

出来ない人に合わせている限り、効率向上は叶わないでしょう。

なかなか根深い問題なのですが、そういう部分を改善していかないことには、いずれ海外に飲み込まれるのは不可避だとも思います。

創作者としては「より面白い話を考える」ということになるのですが、その上で海外の考え方などを学ぶ必要はあるのかもしれません。

海外に合わせる必要はないと思います。日本独自の、ちょっと変わった考え方、ガラパゴス的な魅力というものもあると思いますので、そこは大事にしたいところです。

その上で「海外の人でも理解できる内容」というのは意識した方が良いのかもしれませんね。

英語や中国語はできた方が有利ですが、決して必須ではないとも思います。

コミュニケーション程度であれば、機械翻訳の能力向上により今よりスムーズに行える様になっていくと思います。

もしやるのであれば、現地語の微妙なニュアンスまで分かるようにした方が良いのでしょう。

でもまぁ、そこまでしなくても、それはできる人にお任せして、自分は創作に専念した方が良いとも言えそうです。

もし外国語が堪能な方であれば、現地とのコーディネータ役として今後仕事に困らない環境になるとも考えれられますね。

現代は、創作環境としてはまさに激動の時代と言えるのかもしれません。

出版社に持ち込んだり、公募に送ったりしていたのが全てだった時代から、投稿サイトなどを通じて誰でも簡単に発信できるようになってきました。

そして、それらは日本国内だけではなく、世界各地で広がっていくのでしょう。

大変な時代であると共に、とてもおもしろい時代であるとも言えます。

こんな環境で、創作の末席に関われるのは本当に幸せなことかもしれません。

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