電子書籍の生き延びる道を考えてみた

小説LABO電子書籍

こんばんは、しろもじです。

 

このブログをご覧頂いている方々は「電子書籍」にも興味がおありの方が多いのではないでしょうか? 昨年AmazonのKindleについて、こんな記事を書きました。

その記事内では「電子書籍が今後も伸びていくのは間違いないが、紙の書籍に取って代わるかどうかは分からない」と書いていました。

 

Kindleが来るまでは「これからは電子書籍の時代だ!」と言われていましたが、最近では電子書籍関係のニュースもまばらで、あまり話題にもなっていない気がします。

 

電子書籍の売上自体は、毎年伸びているようですが、それでもまだ全体の1割程度の市場でしかありません。

この先どうなってしまうのだろう?

そんなことを考えている中、気になる記事を見つけました。

『SankeiBiz』

 

「米国で起こったことは、数年後日本で起こる」というのは最早定説ですが、その米国で2年連続電子書籍の売上が減少していると、記事では伝えています。

詳しい数字を知りたかったのですが、上記記事でも他の記事でも、それらに言及されているものは少なく「ふんわりとした記事」ばかりでしたので、少し残念な所です。

まぁ、書籍関連のデータっていうのは、厳密なものって少ないのでしょうがないのかもしれませんけどね。

 

余談ですが、こういう時ほど「英語がスラスラ読めたらなぁ」と思うことはありません。

原文ならデータを多少なりとも探せそうなんですけどね。今年は英語を勉強……できたらいいなぁ(笑)。

 

さて、話を戻しましょう。

データがない以上「米国に続いて、日本でも◯◯年には市場規模が△△程度になって〜」なんて記事は書けません。そこで「数年後、電子書籍が頭打ちになると仮定して、小説家(プロ、アマ)はどのようにしていけば良いのか」ということを考えてみることにしました。

 

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日本の電子書籍市場で漫画が躍進している理由は?

電子書籍(以下、電書)の中でも群を抜いて伸びているのが「マンガ(コミック)」です。

これについてはソースがありました。

リンク先をご覧になって頂けると分かるのですが、2016年のデータでは、日本の電子書籍市場の8割がコミックになっています。

文字ものも伸びてはいますが、コミックの伸びは圧倒的ですね。

私もKindleでコミックをダウンロードしたことはありますので「なんでコミックがこんなに伸びているのか?」を考えると、大きく2つの理由があるのではないかと思います。

  • 続きモノである場合が多い
  • ターゲット層が若い

まず「続きモノである場合が多い」。これはコミックでは、多いと言うよりほぼ当たり前ですね。

単巻で終わるものも中にはありますが、ほとんどが連載ものになっています。

これに加えて「1巻0円でお試ししているものが多い」ことと「連載であるが故に、続きが気になる」ということも挙げられるかと思います。

私もこれにやられました(笑)。

 

例えば20巻発行されているコミックがあったとして、紙媒体だと流石に20巻一気に買うことって、あんまりないじゃないですか。

「絶対面白い」と分かっているものならまだしも「ネットで評判らしい」程度だと、せいぜい2,3巻買うくらいですよね。

そこで強烈に面白くても、読み終わってすぐに買いには行きませんよね。「ま、明日帰りに買って帰るか」程度でしょう。

そして、そのまま忘れてしまうこともあります。

でも、電書だとボタンひとつで買えちゃいますからね。これほんと危険(笑)。

 

しかし、その危険な分だけ「買うハードル」が下がっているのも確かです。

コミックの場合、比較的「発行間隔が短い」というのもありますね。結果として既刊が多くなるというわけです。

また、先程書いたように「1巻0円」などの、販売戦略も練られているのが特徴ですね。

「とりあえず見てみて」ということで、読んで貰って2巻以降に繋げていくという。

文字書籍でも「0円」を掲げているものはありますけど、やはり続きものにならないことも多いので、なかなか後が続いてこない感じです。

 

2つめの「ターゲット層が若い」は、私みたいなおじさんでも買いますから、全てそうだとは言えませんが、文字だらけの書物とコミックで比べれば、調べるまでもなく若い層が買うのはコミックでしょう。

学生さんとかだと決済手段が難しい(クレジットカードなどが持てない)ので、どちらかと言うと今流行の「無料コミック」などに流れていると思いますが、もう少し上の層辺りがメインの顧客でしょう。

ターゲット層が若いと、なんで電子書籍が優位なのかと言うと「所有したい」のか「消費したい」のかの違いだと思います。

上の世代になればなるほど「本は現物として持っておきたい」という感覚が強いものです。

電書は「所有物」にはならないので、「自分のものにならないもの」にお金を払うのに違和感を感じてしまうのです。

もちろん、若い層でも「持っていたい」という感覚はあるかと思いますが、コミックなどは「消費物」になりがちなのではないかと思います。

コミックは刊行ペースが早く、ブームの移り変わりも激しいので、ずっと持っておくという感覚が持ちにくいのではないでしょうか。

それは1巻0円での販売を見ても明らかです。「とりあえず見てもらって、その内の何%でも続きを買ってくれればいい」という売り方です。

1巻を所有物として売る方法とは明らかに異なりますよね。

 

文字ベースの電子書籍の生き残り戦略

コミックの躍進を見た上で、文字を主体とした電子書籍の生き残り戦略を考えてみます。

ただ「電子書籍業界全体」のこととなると、とても手に負えません(笑)。

ここでは「現在紙媒体で商業出版していない作家の生き残り戦略」ということにします。

 

コミックに倣え!

上で書いたように、コミックの成功は「刊行ペースが早く、シリーズものの既刊が多い」ことと「所有物としてではなく消費物として売り込んでいる」ことが、要因だと思われます(もちろん、他にもありますが)。

文字ベースの電子書籍も、この方法論が当てはまるでしょう。

とにかく刊行ペースを上げて、シリーズもので年に少なくても4巻、できれば6巻程度発売していく。

人気の出ているタイトルなら、様子を見ながらプロットを作り変えてでも、10巻、20巻と続けていく。もちろん、人気がなければ打ち切り。

 

これを見てピンときましたよね。

そう、これって今のラノベの売り方です。

あくまでも紙ベースの話なので「1巻0円」戦略は使えませんし、売り方として違う部分もあるので、同じ土俵には乗せられませんけどね。

 

 

電子書籍は出版社を通さない方が良い?

今でもKindle Direct Publishing(KDP)やnoteなどで個人の電子書籍出版は行なえますが、あまり羽振りの良い話は聞きません。

まず、いくら電子書籍が伸びていると言っても、まだ全体の中では11%強といった比率でしかなく、市場規模的には「個人が割り込んで食べていける」市場ではないのでしょう。

 

しかし、電子書籍は個人でこそ出版すべし、と私は思います。

以前「これからの小説家像について考えてみる(後編)」という記事で書きましたが、KDPで出版し、KDPセレクトに加入してKindle Unlimitedの読み放題で読まれると、400ページの本でロイヤリティが約200円となります。

もし読み放題でなく、600円でご購入されると600円×70%=420円のロイヤリティとなります(KDPセレクトでの配信費は除く)。

まぁ、恐らくこれからは読み放題の方向へ向かうと思うので、1冊読まれると200円だと思っておきましょう。

 

ここでやや混乱されている方もいるかもしれません。上の説明では単位が異なるんですよね。

400ページの本で200円。

600円の本で420円。

つまり、読み放題の方は「ページ数」がロイヤリティの単価であって、価格ではないんですよね。

だから、ざっくり「1冊売れれば200円位のロイヤリティ」と思えば良いと思います。

 

「あんまり儲からないじゃないか」

 

と思います? 私もそう思います(笑)。

しかし、読み放題では単価の考え方の概念が、全く異なることになります。

1冊買い切り型で言えば「単価を下げればロイヤリティ(印税)も下がりますから、ある程度の価格を維持しないといけません。

しかし読み放題であれば、最低価格に設定しておいても良いわけです。

この辺の計算は複雑になりますが「最低価格にして、既存の本との価格優位性を出す」のか「あくまでもある程度の価格を保っておいて、読み放題以外で売れた時のロイヤリティを確保する」のかという考え方で変わってきます。

しかし、前者の価格優位性を出した方が良いのかなと、個人的には思います。

 

 

メモ

KDPセレクトに入っていても99円などで販売することができるのですが、その場合のロイヤリティは99円×35%≒34円。

これなら、読み放題で読まれた方がお得な気もします。

しかし、読み放題の場合「読んだ分だけ」なので、途中で止めちゃうとそれだけしか入ってきません。

逆に言えば、内容がしっかりしていれば99円でもページ数×単価になるので、価格競争力が出るといえます。

この辺も非常にややこしいですね。

でも今回はKDPの販売価格の考察ではありませんから、この辺にしておきます(また記事化します)。

 

 

細かい計算は置いておくとしても「出版社から出版される機会を待つ」くらいなら、私は個人出版した方が良いと思います。

もしくは両方やってもいいですね。

というか、私は全部やるべきだと思っています。

  • 「小説家になろう」「カクヨム」などの投稿サイト。
  • KDPやnoteなどの有料個人出版。
  • 既存出版社への公募

これらは、作家にとって競合するものではなく、それぞれ上手く使うものだと思います。

 

昔ながらの「いつかは書籍化」なんて言っていると、例え1冊出せたとしても、それが大ヒットしない限りは、一生の仕事にはしていけないですよね。

私はその内「出版社から書籍化することがリスクになる」時代になるんじゃないかとも思っています。

あまりに出版社に頼りすぎて、作家が本当の意味で独り立ちできず、かと言って出版不況で、折角出版しても大したお金にもならない。

下手に出版して、失敗すれば「ダメな作家」の烙印が押されて、もう業界で食べていけなくなる。

そんなことも、起こるかもしれませんね。

 

 

まとめ

ただ、先に言ったように「KDPなどだけで食べていけるか?」と言われると「今はとても無理」だということになります。

先の「これからの小説家像について考えてみる(後編)」に書いたように、色々なものをミックスさせていく必要はあるでしょう。

 

 

いずれにしても「出版社におんぶにだっこ」な作家は、一部を除いて生きていけなくなるのは確かでしょう。

出版社による出版は、個人出版に比べて、宣伝に掛けられる人・物・金が数段違います。

またレーベルの信用度もまだまだあります。

しかし今はSNSなどもありますから、昔に比べれば恵まれているとも言えます。

 

電子書籍に限って言えば、まだ数年は伸びる市場だと思いますし、冒頭に挙げた「アメリカの電子書籍離れ」の話題も、そのまま日本に当てはまるとは限りません。

また、アメリカの電子書籍だって、今後どうなるかも分かりませんよね。

 

物が豊富になってきて「所有する」という価値観から「体験する」という価値観を大切にするようになってきていると思います。

音楽などは一部の「なんとか券」目的以外では、CDなどが買われることはガクッと減ってしまいました。

車だって、まだ保有するのが当たり前ですが、そのうちライドシェアなどで「要る時だけ借りる」のが当たり前になるでしょう。

 

書籍だけが、それから逃れることは出来ないのだと思います。

私やあなたが生きている間に、紙の書籍がなくなってしまうことはないと思いますが、比率は間違いなく変わっていくでしょう。

でも、それは大手出版社にとってはピンチですが、個人にとってはチャンスとも言えます。

そう思いながら、色々試行錯誤してみるのもいいかもしれませんね。

 

最後までご覧頂き、ありがとうございました!

こんなに長く書くつもりはなかったのですが、すっかり長文になってしまいました(笑)。

テーマが大きすぎたため、あまり詳細に書き込めなかったのが(これでも随分削りました)ちょっと残念ですが、作家を目指している方の参考に少しでもなれば幸いです。

 

それでは、またあした〜。