2020年の小説執筆環境はどうなっていくのか?

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2019年は、恐らく後々に振り返ったときに「小説を書く・投稿する」環境が大きく激変した年として記憶されるのではないかとおもえるくらいに、色々あった年でした。

そこで2019年を簡単に振り返りながら2020年がどうなっていくのかを予想してみたいと思います。あくまでも素人の「ぼくのかんがえたしょうせつしっぴつかいわい」という話ですので、エンターテイメント記事としてお読み頂けると幸いです。

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とにかく小説投稿サイトが激増した!

元々2004年の「小説家になろう」から本格的に始まった「小説をWebに投稿できるサイト」ですが(※)、2016年3月の「カクヨム」参入から一般的な認知も増え始め、今年2019年は大小様々な小説投稿サイトが増えた1年だったように思われます。
※)もちろん小説家になろう以外にもたくさんの投稿サイトもありましたけどね

それより以前はHTML、CSSを手書きで書きながら、もしくはHomepage Builderのようなソフトウェアを使って個人的にサイトをつくるしかなかったのが、ブログなどを経て「みんなが投稿し、みんなが読める」というサービスへと繋がっていったのは、正常進化と言えそうですが面白い流れでもあります。

それから2019年は講談社の「セルバンテス」(2月)、LINEの「LINEノベル」(4月)、スターツ出版の「ノベマ!」(4月)、ホビージャパンの「ノベルアップ+」(5月・プレ)と大手出版社の投稿サイトが続々と誕生。

当サイトの「小説投稿サイト・サービス一覧」のページをつくったときには、少なくとも50以上のサイトが確認できていました。もちろん完全網羅じゃありませんので、実際にはもっと多いはずです。

出版社直轄の投稿サイトが増えた理由としては「小説家の囲い込み」がよく挙げられています。それは間違っていないし、恐らく理由のひとつだとは思うんですが、私は別の理由もあると思っています。

それは「読者の囲い込み」。

これまでも当然、出版社のWebサイトは存在していました。でも余程の本好きでないと、出版社のWebサイトを見て「今月の新刊は……」と探す人って早々いないんじゃないかな、と思うんです。多くの人は本屋さんに行ってから、店頭に並べられた書籍を見て買う。

これって漫画とは少し違う行動ですよね。漫画も店頭買いはありますが、漫画には「雑誌」というものもあります。雑誌に先行して掲載することで人気に火がつき、単行本も売れていく。

小説にも雑誌はありますが、かなりマニアックな存在になってしまっています(て言うか、漫画の雑誌とは趣旨が違う)。

だから出版社としては自社製品をアピールする場が欲しかった。小説投稿サイトに小説を投稿する人は、ほぼもれなく小説好きな人だろうし、そういう人が集まるサイトを作れば宣伝効果も抜群なんじゃないか。

私はそれが主となる理由じゃないかなぁ、と思っています(後付ですが)。

「小説を投稿する」が変わる

小説を投稿する人の視線に戻ってみましょう。

先程話したように、昔は「小説を投稿・公表する」には個人サイトをつくるか、出版社の公募に応募するしか方法はありませんでした。

個人サイトから出版社にスカウトがあり、書籍化された例もありますが、やはり主戦場は公募だったのではないでしょうか。

ただ公募はやはり少しだけ敷居が高いわけです。書式も専用のものにしないといけませんし、今ではWeb応募も可能になってきましたが、以前は「印刷したものを郵送する」という形式を取っていたため「よーし、応募するぞー」と気合の入った人じゃないとなかなか難しかったのも事実です。

これがWeb投稿サイトになり、気楽にコピペするだけ(もしくはオンラインで書くだけ)で投稿できるようになったことで、小説を書き投稿する人の裾野は大きく広がったんじゃないかなと思います。

ただ小説を書く人の人口が爆発的に増えたのか、と言えば、実際にはそれほど大きく増えたわけでもないと思っています。書く=投稿じゃなかった、書いたけど机の引き出しにしまっていた。そんな人が「簡単なら」とWebに投稿するようになった、という感じではないでしょうか。

先日の記事でも書きましたが、小説は文字だけの表現方法であり、それ故に簡単でもありそれ故に難しくもあります。ただ「文字を打つだけ」なので、それが完成形としてどうなのかは別とすれば、漫画や動画に比べて参入障壁が低いのは間違いないところでしょう。

なので小説は「どんどん入ってきてどんどんいなくなっていく」という創作人口の推移をするんじゃないかな、と個人的に思っています。言い方悪いけど多産多死ってやつです。

Web投稿できるようになると、投稿すること自体も変化していきます。

公募であれば少なくとも規定の枚数を書ききってからでないと、行うことができませんでした。ところがWeb投稿だと「1話から」投稿が可能であり、またコンテストへの応募もできるようになっています。

最終的にはこちらにも規定文字数はありますが、大きな違いは「とりあえず投稿」ができるという点です。良い悪いは別にして「1話から投稿していって、あんまり人気がでなかったら次の小説に取り掛かる」ということができるようになったということですね。

私はこれを「オンライン推敲」と読ん……さっき考えました。

つまり読者の反応などを見ながら、先の展開を変えたり、場合によっては終了させて次に行くことができるようになったというわけです。ひとつの小説をキチンと完成させたい人からすると「ちょっとどうなの?」と思ってしまう手法かもしれません。

でも速度の速いWebの世界では、そのくらいの多産多死がないといけないのかもしれません。

2020年の投稿環境は?

2019年に絵の上達はなかった模様

それを踏まえて来年以降の投稿環境はどうなっていくのかを考えてみましょう。

まず公募はなくならないと思います。それどころかむしろ以前より盛況になっていく可能性すらあります。

前々からお話しているように、小説投稿サイト経由のコンテストでは多かれ少なかれ「読者の反応」が、その順位付けに寄与しています。

選考委員が「ポイントなどを参考にする」場合から「ポイントだけで上位から取っていく」という読者選考至上主義なコンテストも存在しています。

「面白い作品=読者選考で高い評価を受けた作品」であれば、この方式は正しく機能するわけですが、実際にはそれだけではないと思われるフシもあります。

特定のサイトの問題点を糾弾したいわけではありませんので詳しくは割愛しますが、少なくとも書き手側からは「読者選考を抜けるには、面白い小説を書くだけではダメだ」と思われているのではないでしょうか。

多くの書き手にとって自分が書いた小説は、もっとも愛すべき小説なんですよね。それをちゃんと評価して欲しいと思う気持ちは絶対にあると思います。それが「もしかしたら面白い以外の要素があるんじゃないか」と疑ってしまう「読者選考」という仕組みだけで決められるというのは、やればやるほど「おかしい」と思ってしまうのは当たり前の感情でしょう。

そう感じた作者が次に取る行動は……当然「直接編集者が読んでくれるものに投稿する」ことです。もちろん一般的な公募でも、一次選考は下読みさんが読むことになるので、完全に編集さんが目を通すというわけではないのですが、それでも確実に「出版社の中の人」の目には触れるわけです。

だから「2020年は公募回帰な年」になるんじゃないかなぁ、と思っているんですよね。

元々公募志向で、一時的にWebに行っていた人はもちろん、Webから始めて公募に初挑戦という人も多く出てくると思っています。

2020年の小説投稿サイトは?

既に一部でその傾向が見え始めていますが、いくつかの、もしくはたくさんの投稿サイトが閉鎖を余儀なくされるのではと思っています。

恐らく小説投稿者の数は減らないはずです。むしろ増えるかも。

ですが、純粋な読み手は今のままでは増えていきません。上に書いたことに関連するのですけど、Web小説投稿サイトで小説を読むときって、どんな方法で読みたい小説を探します?

やっぱりランキング、それもジャンル別のランキングを参考にするのではないでしょうか?

そのランキングが正しいランクを示していれば問題ないのですけど(ここからは特に個人的な感想です)私が思うにそうではないと感じています。

具体的にどれどうと言う気はないです。ただ投稿サイトのランキングの上位から順に読んでいっても「面白いなぁ」という作品が必ずしも上位にあるとは限らないと思っています。

もちろん、面白い作品は最終的にはランキングの上に来る可能性が高いのは確かです。ですので「面白い小説=ランキングの上位にいる」のは確かですけど「ランキングの上位にいる=面白い作品」ではないということですね。

ちなみに「自分の小説は面白いのにランキングで上位に来てない!」と言ってるわけじゃないですよ(笑)。そこまでナルシストではありません。しろもじ作品に関しては、正しいランク位置を示していると思っています……。

そのようにランキングが正しい機能を示せていない場合、読者としては「なんだ、これ」となるのではないでしょうか。「面白いと聞いて見てみたけど、やっぱり素人の小説はつまらない」と思われるのではないでしょうか。

これはWeb小説投稿サイトにとって致命的なこととなります。

Web小説投稿サイトにとって、もっともよい循環とは「たくさんの作家が集まる→それを読みにたくさんの読者がやってくる→たくさん読まれたいから多くの作家が集まる」というサイクルです。「たくさんの作者が集まる」だけのサイトに未来はありません。

そういうわけで、恐らく大手2,3くらいのサイトを残して、多くは閉鎖や形骸化が進んでいくのではないかと思うわけです。

まとめ

年の終わりに、なんともエラソーな記事を書いてしまいました。

ただそれもこれも「小説と小説投稿サイトを愛してやまない」ことからの言葉でもあるんですよ。上に書いた予想が大きく外れ小説投稿サイトはますます人気が高まって、来年の今頃には「しろもじの言ってることはあてにならない」と指さされる方がいいとすら思っています。

そのためには「来てもらった読者が、安心して良作に出会えるサイト」でないといけないと思っています。

今の若い方はご存じないと思いますが、ずっと前に家庭用ゲーム気の黎明期に「アタリショック」というものがありました。と言っても、私も実際に知っているわけではなく、あとで本などで読んで知ったことなんですけど(そんなに歳じゃありません)。

簡単に解説しますと

北米における家庭用ゲームの売上高は1982年の時点で約32億ドル(同年末の日本円で約7520億円)に達していたが、1985年にはわずか1億ドル(同年末の日本円で約200億円)にまで減少した。北米の家庭用ゲーム市場は崩壊し、ゲーム機やホビーパソコンを販売していた大手メーカーのいくつかが破産に追い込まれた。ゲーム市場最大手であったアタリ社も崩壊、分割された。この1983年から1985年にかけての北米家庭用ゲーム市場の崩壊をVideo game crash of 1983と呼ぶ。日本ではアタリショックと呼ばれる。

Wikipediaより引用

といった感じで、要は「儲かるからと有象無象のメーカーが参入した結果、粗悪品が市場に溢れ、ユーザの信頼を失った市場が崩壊した」というのが多くの見解です(ちなみに超余談ですが、アタリ社にはあのスティーブ・ジョブズも従業員として働いていました)。

現在の小説界隈は、まさにこのアタリショック前夜といった様相のように思えませんか? いやもしかしたらもうショックは始まっているのかもしれません。

この教訓から言えることは「ユーザの信頼を裏切った業界は、必ず崩壊する」ということです。100人が聞いたら100人が「そんなの当たり前」と答えるはずのことですけど、こういうのって往々にしてよくあることなんですよね。

そうならないためには「ユーザが求めていることに、できるだけサービスを近づけていくこと」が大切になると思われます。小説投稿サイトで言えば「増えすぎるコンテンツは仕方がないとして、それをどう整理し、面白い作品を読者に伝えていけるのか」がカギになるのではないでしょうか。

でもまぁ、割と本気でこの記事が大きくハズレて「2020年が創作にとって最も良い年になる」っていうのを期待しているわけです。その末端あたりで「私も少しでもお役に立てれればな、そしてどこかのコンテストで奇跡的に掠ったりしないかな。っていうか、書いた小説が大ヒットして……ぐへへ」などと煩悩にまみれつつ、2019年最後の記事としたいと思います(多分)。