ロボット・イン・ザ・ガーデン【小学館文庫|デボラ・インストール著】

2017年10月5日読んでレビュー

小学館文庫から出版されている、デボラ・インストール著の「ロボット・イン・ザ・ガーデン」。

 

2016年のベルリン映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれた、という帯に惹かれて買ってみました。

 

ある出来事をきっかけに、挫折を味わい仕事にも就かず、両親の残してくれた家でニートのように暮らす34歳の主人公「ベン」。

 

ニートなのに奥さんがいて、その奥さんはやり手の弁護士「エイミー」。ちょっと羨ましく思えてくる環境ながら、よくよく考えてみると、それはそれで辛いよなぁという二人の仲は、当然のように上手くいっておらず、喧嘩も絶えない日々。

 

そんな時、自宅の庭に転がり込んできた、壊れかけのレディオ……ならぬ人形ロボット「タング」。

 

表紙の絵にもあるように、四角い身体に四角い頭。手は蛇腹のホースのようなものでできていて、胸にあるフラップは事ある毎にパカっと開いてしまう。

 

そんなポンコツロボットのタングですが、これが憎めそうで憎めない、凄いギリギリを突いてくる可愛さ!

 

ベンとタングは、とある目的のために旅に出るのですが、事あるごとにタングのワガママに振り回されるベン……と思いきや、ベンはベンで「おいおい、大丈夫か?」という行動を取ったりしてて、ある意味とても「似た者同士」な二人(と敢えて言う)。

 

この物語には「異能力者のバトル」も「強大な悪の敵」も「人類が滅亡する危機」も「あっと驚くような大どんでん返し」も「巧妙に張り巡らされた伏線」も……

 

ありません。

 

物語は淡々と進み、ベンとタングのやり取りに「キャッキャウフフ」しているうちに、あっという間に終盤へと向かい、そこで少しだけ「そうなの!?」という展開が待っています。

 

ページを捲ると、いつまでもその世界にいたくなり、本を閉じるのが嫌になります。

 

読み終えると、ほっこりした気分になって、心が少し暖かくなった気がします。

 

そして、その後の続きが読めないことを、少し寂しく思ってしまいます。