砕け散るところを見せてあげる【新潮文庫nex|竹宮ゆゆこ】

2017年10月20日読んでレビュー新潮文庫nex, 竹宮ゆゆこ

 

いきなりアフィリエイト広告から入って申し訳ないのですが、どうしてもまずは表紙を見ていただきたくて、こんなことになりました。

この本はいわゆる「表紙買い」です。ジャケ買いとかとも言いますか。

恥ずかしながら知らなかったのですが「浅野いにお」さんという方のイラストとのことです。

これがですね、本屋さんの棚に並んでおりまして、思わず目が合ってしまったんですよ。よくよく見ると可愛いイラストなんですが、パッと見た時は思わずドキッとしてしまいましたね。

アラフォーのおっさんが、本を見てドキッですよ(笑)。引いちゃいますよね。

笑っているようで、ちょっとだけ悲しげ。ずっと見ていたいような、ずっと見ていられないような。不思議なイラストです。

 

表紙評論家じゃないので(笑)、本題に入りますが、この本が出版されたのが2016年6月1日。買ったのは確か今年に入ってすぐ位だったかと思いますが、ずっと積ん読になっていました。

 表紙買いと言いましたが、実際には表紙を見て「あら? この作者さんどこかで……?」と思ってしばらく考え込んでやっと「あぁ、とらドラの人か」ということに気が付きました。竹宮ゆゆこさんです。

 とらドラ、ご存知ですか? 文庫本版というかKindle版なんですけど、2巻までは読んでいたんですよね。別に止めたっていうわけじゃなくって、実はアニメーションでもう終わりまで見てしまっていたので、なんとなく後回しになっている状態です。

 

とらドラは「ラノベ」として出版されてましたけど、こちらは新潮文庫からということで、一体どんな作品になっているのか興味があったんですよね。

 

大まかなストーリーは、裏表紙に書かれているものを引用しておきます。 

大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。

序盤は軽快なテンポで展開する「ラノベ」風な感じでスタートします。いわゆる「キャラもの」というか、実際には余りなさそうなくらいキャラが立っている「主人公」とその周囲の人々。

 濱田清澄が蔵本玻璃(はり)と出会って、とらドラのように青春して結ばれていく……というのかな? と思っていましたが、中盤から後半に掛けて徐々に趣が変わってきます。

言うなれば

「ラノベを読んでいたはずが、いつの間にか村上春樹になっていた」

という感じ。いや、ハルキストな方には怒られるかもしれませんが(笑)。私も村上春樹さんは大好きなんですよ。

 

はっきり言って1回読んだだけで理解できるわけがありません。というのも、後半の「村上モード」になってからも、テンポの良さだけは変わらず、考えるよりも先に読み進めてしまえるからなんですよね。

 意味が分からない。どうなっているのか分からない。でも物語はどんどん進んでいき、あっという間に完結します。

読後に頭を過るのは、爽快感と「?」という記号。

何だったんだ……。

 一体何が起こったんだ……。

呆気にとられながら、もう一度冒頭から読み返す。

なんとなく違和感があることに気がついて、ページを何度も行ったり来たりしているうちに「あ、そういうこと!?」ということに気がつく。

 そして、それに気がつくと、作品中で「なんか、変だな」と思っていたことが、ビシーっとはまっていって、全てが収まる所に収まっていく感じを覚える。

それでもいくつかの疑問は残る。

何度か読み返している内に、なんとなく「そういうことかな……?」というのが、ボヤッと見えてくる。それが合っているのかどうかは分からないけど、こと小説というのはそういうものだ。 読み手によって解釈が違っても良い。

作者が書き、読者が読む。そこで小説は完結する。 

という具合に、本作は「噛めば噛むほど味が出る」じゃなかった「読めば読むほど味が出る」作品に仕上がっております。かつ、読みやすい文体で、何度読み返しても全然苦にならないのは流石としか言いようがありません。

年をとるとラノベ風の文体がキツくなるという方もいらっしゃいますが、竹宮ゆゆこさんの文体はちょうどよい感じで、先にも書きましたが「流れるように文章が入ってくる」珍しい作品だと思いますね。

ぜひ、ご覧になって下さい。

とらドラもぜひ。私も最後まで読みます(笑)

 

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