キノの旅 the Beautiful World【電撃文庫|時雨沢 恵一】
今回は正真正銘のライトノベル、電撃文庫から発売されている「キノの旅 the Beautiful World」のレビューになります。
私は「キノの旅」というタイトル自体は知っていたのですが「ゲームかな?」と思っていました。先日始まったアニメで、初めてラノベだったことを知って、調べてみたらやっぱりゲーム化はされていたようで、PS2で発売されてたんですね。懐かしいなぁ、PS2。
アニメが結構面白かったので、4話「船の旅」を見たところで一旦中断。ラノベを先に読むことにしました。
アニメでは、結構淡々と進む展開で、はじめは戸惑いましたが、一話が終わる頃にはすっかり慣れてしまい、こういうのも有りだなという感じです。一方原作の方も、同じように淡々と進むのですが、ひとつひとつの文章が短く、ある意味とても読みやすい。逆に言えば、普通の小説に慣れ親しんだ方にとっては、少し戸惑いがあるかもしれません。
ネタバレしない程度の内容を紹介しておきます。
主人公のキノはモトラド(二輪車で空を飛ばないもの)の「エルメス」と共に旅をします。旅の先で出会うのは、少し変わった国や人々。「ひとつの国には3日間」というキノのルールの中で展開する物語は、色々なところに書かれているように寓話的であり、風刺的な要素を持っています。
キノが驚くほどの銃の腕前だったり、モトラドが喋ったりと、ライトノベル要素をしっかりと保ちつつ、一般に言われているようなラノベとは一線を画する本作。
実は今現在は2巻目しか読んでいないのですが、かなりサクサクと読めるので、疲れている時でも「読もうかな」という気にさせてくれます。難しい本は、疲れている時(特に頭が)にはキツイんですよね。頭の良い方なら、全然問題ないのかもしれませんが、私のような一般人にはこのくらいのライトさがちょうどよい、心地よい読み応えです。
まだ2巻なのでどうこう言えないのですが、アニメ版を見たり色々な感想を見る限り、このライトノベルは小説の大切な要素「主人公の成長」の部分をカットしているように見受けられます。あくまでも、人々とキノとが出会い、それによって物語が転がり完結する。そういう話です。
いい意味でも悪い意味でも、キノとモトラドはクールで、過剰に出会った人々に干渉したり、正したり、片棒を担いだりはしません。例えば(例えとして適切かどうか分かりませんが)水戸黄門は、同じように各国を漫遊する話ですが、そこにある悪を正していきます。
しかしキノは深く干渉することをしません。結果として、そういうことになる話は多いのですが、それはあくまでもキノのやり方、生き方を貫いた結果として生まれたものです。でも、かといって「何に対しても無感情、無干渉」なのかというと、実はそうでもなくって、キノは何も言いませんが、実は敵討ちだったりすることもあったりします。
感情をモロに表に出して、分かりやすい昔ながらの主人公像とは違い、一見「何を考えているのか分からない」キノという主人公。それでも2巻を読んだだけで、キノという主人公の魅力は十分に見えてきます。
長くなりましたが、最後に本書の構成などを。
1巻に対し、おおよそ8話から12話の短編となっていて、どこから読んでも理解できるような構造になっています(ただ、それでもやはり物語の中で語られ、全体としての進んでいる部分もあるようなので、1巻からの読書をおすすめします)。
また先程も言いましたが、非常に読みやすい文体に、内容の展開も早いので、ちょっとした空き時間などにサクサクと読み進めることができますね。
ちなみに私はKindle版を買っています。おっさんになると、書店のラノベコーナーが向かうのが、ちょっと勇気がいるんですよね。というか無理です(笑)。
それに、スマホなどにもKindleアプリを入れているので、いつでも読めますしね。例えば家でKindle Paperwhiteを使って読んで途中で止める。出先の空き時間でKindleアプリを開くと「以前読んでた所に移動するか?」と聞かれるので「はい」とすると、止めた所からすぐに再開できて、とても便利です。
でも「紙の書籍で持っていたい」という方もいらっしゃるかもしれませんね。私も書籍で買う場合も多いですよ。
特に感動があるわけでもない。心が暖かくなるわけでもない。笑い転げるわけでもない。でも、なぜか続きが読みたくて仕方なくなる。そんな不思議な本書「キノの旅」。独特の雰囲気を楽しみたい方、スキマ時間に読書をしたい方などにお薦めです。
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