書く力 私たちはこうして文章を磨いた【池上彰、竹内政明|朝日新書】
この手の「教養本」と言うのは、ここ(読んでレビュー)で取り上げるべきかどうか、随分悩んだのですが、小説を書くということは、様々な知識を蓄えていくことも重要かと思いますので、加えていくことにしました。
今回はその中でも「書くこと」に一番関係がありそうな一冊を選びました。
本書は、池上彰さんと竹内政明さんの対談形式となっています。みんな大好き池上彰さんに関しては、改めて紹介することはないかと思います。竹内政明さんは、ご存じの方も多いかもしれませんが、読売新聞の一面コラム「編集手帳」を担当されていた方であります。(注:2017年10月3日より他の方に交代されたとのことです)。
池上彰さんも、元NHKの記者あがりですから、お二人とも新聞という媒体を通じて、文章を商売にしてきたプロフェッショナルな方々ということになります。
この手のコラムというのは「文字数に限りがある」ことが特徴です。もちろん、他の新聞などの記事でも制限はあるでしょうが、編集手帳ではおおよそ460字くらいで書かれているらしいのです。460字がどれ位かと言うと←このブログの冒頭からちょうどここまでで、460字になります。
つまり、冒頭から「言うと」までの間で、文章が閉じていないといけないわけです。これはもの凄い技術だと思います。
ブログなどをやっていると、文字数の制限がなくついダラダラと書いてしまいがちです。むしろ「文字数が多いほうが良い」という風潮すらあったりします。
もちろん、長い文章には長い文章の良さがありますが「徹底的に削る」技術と言うのは、一朝一夕で築き上げられるものではありません。
そういう意味でも、まずこのコラムを長年書き上げられてきた竹内さんの「秘訣」を知る機会として、本書は大変有用であると言えます。
教養本と言うことで、若干硬い文章になってしまいましたね(笑)。ここからは少し柔らかくいきましょう。
まず本書で語られていることが「部品を集める感覚で、知識をストックする」という話があります。これは小説家にも重要なことではないかなぁと思います。本書では、詩や俳句、エッセイなど色々なストックが例として上げられています。
若い方にとっては「昔の作品」もたくさん出てきますので、ある意味「勉強」のように思えてしまうかもしれません。しかし、それらを渋々読む必要はありません。文章に触れていれば、必ず何かしらの縁で触れる機会は出てきます。
その時に読まず嫌いをせず「いつか自分のストックとなるはず」と思って、目を通しておくと良いでしょう。一言一句覚える必要はありませんよ。でも、インプットがなければアウトプットはできないのです。
無から有は生まれません。
新しい作品は、何らかの形での「過去の作品の組み合わせを変えたもの」なのです。パクリとは違いますよ(笑)。
あくまでも私の考え方なのですが、例えばあなたが今見ているPCやスマートフォン。これらがどうやって作られているか知っていますか? 原理的には「知っている」方も多いかもしれませんけど、では「じゃ、作ってみて」と言われると作れませんよね。
技術と言うのは、過去の知識を加工したり組み合わせたりしながら発展してきたものです。誰かが突然「スマホを思いついた!」と言って作ったものではありません。
小説など文章も同じだと思うんですよ。
過去のものを勉強し、そこから得た知識を組み合わせたり、それに何かを足したり引いたりして、新しいものが生まれるんですよね。ですから、過去のものにたくさん触れれば触れるほど、ストックは広がっていくというわけです。
また、冒頭でも書きましたが「文章を削る技術」についても触れられています。ブログなどの記事や、小説などでも「必要のない文章、表現」というのは、つい出てきてしまいますよね。
それらを徹底的に削ぎ落として、それで残ったものが最良の文章である。確かスティーブン・キング氏もそんなことを語っていたような気がします。
それ以外にも、文書を書く上での技術的な話や、編集手帳作成の裏話など、たくさんの話題が本書には書かれています。
文章を書くということは「誰かに何かを伝えること」。
ブログに小説にと、書くことが大好きな方は、ぜひ一度読まれるべきだと思います。
私なんかは「まだまだだなぁ」と、ついつい反省モードになってしまいがちですが、それでもこれを手元に置いて、時々見直しながら、いつかは誰かをうならせるような文章を書いてみたいですね。
最後に、本書の冒頭では池上彰さんが「はじめに」、最後では竹内政明さんが「対談を終えて」というタイトルで文を書かれています。
冒頭の池上さんの文章も秀逸ですが、竹内さんの「対談に終えて」は、とても短い文章ながら、読ませる文章になっており「さすがは名コラム担当者だ」と、うなってしまう出来になっていますので、ぜひご覧下さい。
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