応えろ生きてる星【竹宮ゆゆこ|文春文庫】

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こんばんは、しろもじです。

久々の「読んでレビュー」になります。

今回は竹宮ゆゆこ著『応えろ生きてる星』です。

 

竹宮ゆゆこ氏と言えば、以前『砕け散るところを見せてあげる』をレビューしました。

そして同氏の代表作と言えば『とらドラ』ですね。

『とらドラ』はいわゆるラノベ枠ですが『砕け散る〜』は、上のレビューでも書きましたが「ラノベ要素を持った村上春樹」というのが私の感想でした。

 

一方『応えろ生きてる星』は、もはや一般文芸と言っても良いほど。

『砕け散る〜』の文体は、やはりラノベっぽい部分があって、いい意味で軽いという感じでした。中盤から後半へと向かう部分で大きく作調が変わるという箇所があり、そこが「いつの間にか春樹」という感想になったのかもしれません。

ただ、決して悪い意味ではなく、違和感は感じるもののなんとも言えない混ざり方をしているので、読む手としては「いつの間にか」であり、書き手としては「凄いな」ということになるわけです。

 

『応えろ生きてる星』はそういう竹宮ゆゆこさんらしさを残しつつも、より一般文芸に馴染んでいる方でもスムーズに読むことができる作品に仕上がっているように思います。

それが「出版社が違うから」なのか「作者が意図的にやっていること」なのか、それとも「どちらも含めて」なのかは分かりませんが、文体を変えて書くというのは、思っている以上に難しいものです。

上辺だけなぞっても、どうしても芯まで染め替えるというのはなかなか難しく、どこかしら薄っすらと元の色が見えてくるというのが普通だと思います。

 

そういう部分だけ見ても、作者の技量の高さが分かる作品だと言えるでしょう。

 

この作品、実は出版された時に書店に平積みになっているのを見て「買うべきか?」と悩んだんですよね。

私自身も(竹宮ゆゆこさんとは比べてはいけませんが)一応小説を書く身として「読みやすい文体」というものには気を使っています。

正しい文章か、正規の表現なのか、そういうことよりも、読み手がすらすらっと読めること。それが一番大切だと思っています。

ある意味、竹宮ゆゆこさんの文章は、私の目指すべき部分の先にあるわけで、あまり読みすぎると「戻れなくなるほど引きずり込まれる」ような気がしていたんですよね。

 

だから、小説を買う時は、できるだけ自分の目指すべき文体とは違うものを選ぶようにしていました。文体は作風と言っても良いかもしれません。

ところが、とある方から、とあるTwitterで「ぜひ読むべし」とおすすめして頂きまして「それならば」と買ってきたわけなんですよね。

買ってすぐ読んだものの「これはどう言えば良いのだろうか」ということで、整理するのに時間がかかってしまいました。

 

それほど難しい話をしているわけではないのですが、結論としては上記のようなこと、そしてその軽快な文章の中にも所々、ハッとするような文章が混じっているところ。

そういう部分が本書の魅力なんだろうなというのが、今の率直な感想です。

 

ストーリーにも少しだけ触れておきましょう。

多少ネタバレに近いものもありますので、ご注意下さい。

 

 

 

本書は『砕け散る〜』よりも『とらドラ』に近いストーリーになっています。

話の内容ではなく、流れみたいなものですね。

そして、結末は2作と同様に「完全なハッピーエンドとは言えないけど、それでもハッピーエンド」という終わり方になっています。

「完全なハッピーエンド」の定義は難しいのですが、どんな読み手でも素直に「よかったなぁ」と思えるものがそうだとしましょう。

そういう意味では「完全なハッピーエンド」ではないということです。

かと言ってバッドエンドでもありません。

 

普通に生活していると、当然ですが「完全なハッピーエンド」などはあり得ません。

人生を通して、というだけではなく、小説に描かれるように節目節目を取ってみても、なかなかそういうことはないですよね。

でも、その中で「ベターなもの」を私たちは選択していくわけです。

「完全なハッピーエンド」があり得ないのは、人は自分とは違い、自分もまた人とは違うからです。

全ての人が納得して、満足して、感動するような話には、なかなかならないのはそういうことだからでしょう。

それでも、その中から幸せの最大公約数を探していくわけです。

多少のしこりは残りつつも「まぁ、よかったよね」と言えるもので決着をつけるわけです。

 

しかし、そのしこりがあるからこそ、逆に出来事が印象深くなったり、意味のあることになったりすることもあります。

「ご都合主義か?」と思えるほどの展開は、何も残りませんし、次へと繋がるものも育ちません。

 

最近の、特にラノベなどは、一時期ほどではありませんが、やはり「ご都合主義的な解決」が残っています。

それ自体が決して悪いわけではないのですが、こういう「ベターな結末」を書き上げるのは、とても大変なことでもあります。

そういう意味でも、竹宮ゆゆこさんの凄さっていうのを感じられるのではないでしょうか?

 

つらつらと思ったことを書きましたが、本書はほぼ万人におすすめできる一冊になっていると思います。

特に「ラノベ嫌い」な方や「だから竹宮ゆゆこ好きじゃない」という方は、ぜひこの1冊から始めるべきかと思います。

普段一般文芸を読まれている方にも、ぜひおすすめしたい。

『砕け散る〜』は確かに、少々難しいものがありました。

しかし、本書は先にも書きましたが「完全な一般文芸作品」です。

 

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