文法のお話【はじめての小説執筆06】

2018年8月30日小説LABOはじめての小説執筆

こんばんは、しろもじです。

本連載は「小説なんか書いたことがない。でも書いてみたい」という方に向けたものになります。

「書いてみたいんだけど、どうしたら良いのかさっぱり分からない」という方へ「こうやってみてはどうでしょう」という感じの記事ですね。

「人気作の創り方」「面白い小説の書き方」ではありませんが(それは私の方が聞きたい)、何かの参考になればと思います。

前回までの「はじめての小説執筆」は、タグから一覧を表示させることができますので、よかったらご覧下さいね。

 

今日は文法のお話をしたいと思います。

本来であれば、この手の話は早めにすべきだったのかもしれませんが、ある理由により第6回まで放置していました。

では、順を追ってお話していきましょう。

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小説における文法とは何か?

文法とは、その名の通り「文章を書く際のルール」です。

文というのは、言葉を文字化して記述し、他者がそれを読んで記述者の思惑を伝えるものです。

ですので、確かにそこには最低限のルールは必要です。

「私はこうやる主義だから」と言い張っても、自分以外が認識できないルールで書かれた文は、暗号文になってしまいますからね。

 

逆に「他者が認識出ればよい」とも言えます。

特に最近では、厳密な文法を守ることよりも「面白さがキチンと伝わればOK」という風潮に変わってきています。

そのようなことから、個人的に「小説を書く際、あまり文法の勉強から入らない方がいいんじゃないか?」と思ったわけです。

とは言え、先程言ったように最低限のルールは存在し、あまりにかけ離れてしまうと、読者にとって「意味が分からない」「読むに耐えない」ということにもなりかねません。

そこで「最低限、これだけ知ってればOK」というものをピックアップしてみました。

最低限守った方がよいと思われる文法

これらは「必ず守らないといけない」というものではありませんが、多くの小説で採用されているルールですので、初めて小説を書く際はこれらに気をつけながら、徐々に自分の形を創っていけばいいのではないかと思っています。

会話文は「」で区切る。

夏帆はちょっとしっかりしてよ、遼太郎と言った。

遼太郎は、分かってるって、〆切には間に合わせるから黙ってろ、と少し顔をしかめる。

夏帆は遼太郎の肩越しにPCの画面を覗き込む。え……これって……? 3行しか書けてないじゃない!?

焦る夏帆に遼太郎は、大丈夫だ。俺は毎時6,000字は書けるからな。20時間もあれば10万時は余裕だろと胸を張る。

一体どこからその自信が生まれてくるのか……。

 

夏帆は「ちょっとしっかりしてよ、遼太郎」と言った。

遼太郎は「分かってるって、〆切には間に合わせるから黙ってろ」と少し顔をしかめる。

夏帆は遼太郎の肩越しにPCの画面を覗き込む。え……これって……? 3行しか書けてないじゃない!?

焦る夏帆に遼太郎は「大丈夫だ。俺は毎時6,000字は書けるからな。20時間もあれば10万時は余裕だろ」と胸を張る。

一体どこからその自信が生まれてくるのか……。

即興で書いたので、内容は無視して下さい(笑)。

会話文を「」で区切る。

当たり前ですが、「」で区切ることで文章の読みやすさが格段に変わってきますね。

 

ただ、あくまでも基本的にはそうした方がいい、というものなので、必ずそうしなければならないというわけではありません。

例えばですが、

 玄関の扉を開けて、中に入る。真っ暗だ。あれ、今日休みなのかな? でも、外には明かりが点いていたしなぁ……。でもま、いくらなんでも、これはやってないんだろう。諦めて引き返そうとすると「いらっしゃいませ……」突然、背後から声が聞こえてきた。ゆっくりと振り返ると、ボワッとしたランタンの明かりの中に老婆の姿が。

「お泊りですか?」

 えぇ、そうなんです。部屋、空いていますかね? おー、よかった。じゃ、1泊お願いできますか? は? 50ゴールド? えらい安いですね。いえいえ、さっき連れのものを泊めた宿は150ゴールドだったので。あー、相場はそのくらい? やっぱりそうなんだ。

ぼくときみのダンジョン再建記』第22話より

自分の小説で申し訳ないのですけど、こんな感じに敢えて地の文に会話を書くこともあります。

この辺は、何人称視点で書くのかとか、作風にもよってきますけどね。

 

それと「」の最後の。は省略するというルールもあります。

×「ちょっとしっかりしてよ、遼太郎。」

◯「ちょっとしっかりしてよ、遼太郎」

段落の行頭は1字下げる。間隔に注意する

「新しい冒険者!? このダンジョンに、こんなに短期間で?」

 アルエルの失礼な言葉にややムッとする。アルエルとの付き合いは、そこそこ長い。彼女が所属していた一族から放逐され、さまよい、我がダンジョンの前で行き倒れていたのが、約10年前のことだ。

 種族的にはダークエルフ。本来、知的で邪悪。この魔王の直近の部下としては、これ以上ない……はずだった。しかし、実際のアルエルは頻繁に私の命令を間違えて部下に伝えるし、飲み物を持ってこいと命じれば、けつまずいて私の顔面にぶっかける。それも2分の1の確率でだ!

ぼくときみのダンジョン再建記』第2話より

段落とは「文章のひと塊」と言って良いと思います。

「一文」ではありません。

意味合い的なひと塊と、読む際の息継ぎ的なひと塊に分類できますね。

本来であれば、前者の意味合いが強かったのですが、Webなどで横書きの文章を読む際、あまりに長い段落になってしまうと非常に読みにくくなることから、ある程度のところで区切るのが良いとされているようです。

 

あくまでも個人的な感想ですが、

  • スマホなどで読んだときに、画面内に2つ程度の段落があるようにする
  • 段落と段落の間は、1行開ける
  • 段落の頭に全角の空白(スペース)を入れる
  • 会話文の前後も、1行開ける

こんな感じかな、と思います。

ちなみに、上の例文(自作の小説)をPCとスマホで見た時のスクショを掲載しておきましょう。

まず、PCではこのように見えます。

次にスマホではこうなります。

縦書きで構成されている紙の書籍ならば、ある程度詰まっていても読みやすいのですが、横書きとなるとギチギチに詰まっている文章は格段に読みにくくなります。

ただ、横書きで詰まっていても読みやすい文章というのも確かにありますから、その辺は「読者層」「小説の内容」「書き手の力」などを考慮しつつ、調整するのが良いと思います。

逆に、行を開けすぎてスッカスカになっていると、これもまた読みにくかったりします(スクロールばかりする羽目になるから)。

 

また会話文「」は1字下げしないのもルールです。

会話文から始まって、そのまま地の文が続く場合も下げなくていいと思いますが、私はたまに下げています。

 「ちょっと待ってて下さいね」と言って、アルエルが自室から持ってきたもの。それは、頭に付ける猫耳と、おしりの辺りに付ける猫のしっぽだった。ポカーンとしているキョーコに、アルエルが「こうやって付けて、こっちはこう……。わー、とっても似合ってますー」とご満悦の様子だ。

ぼくときみのダンジョン再建記』第7話より

これは「会話文だけど、あくまでも地の文のひとつ」と捉えるのか「会話文から始まって、地の文がそれに続く」と考えるのかで、変わってくるのだと思います。

 

ちなみに、今読んでいらっしゃるWebサイトの文章では、少しルールが異なることがあります。

この文章も「行頭1字下げ」はしていませんし、一文ごとに改行をいれています。

漢数字とアラビア数字の統一

例えば「3,000」という数字を小説に記述する場合

  • 3000
  • 三千
  • 三〇〇〇

という書き方ができます。

「この剣、なかなかいいじゃないか。いくらだ?」

「へい、ありがとうございます。4,000ゴールドになります」

「高いな……。三千ゴールドなら買うんだが」

「お客さん、それじゃ赤字になっちまいますよ。せめて3,800ゴールドで」

「もう一声! 三三〇〇ゴールドで!」

「3,500ゴールド。これ以上は引けません」

こんな感じになってしまうと、読む方も大変ですよね。

この例は極端になっていますが、長い小説を書いているとグチャグチャになることもあります。

迷う場合はアラビア数字に統一しておいた方が良いかなぁと思いますね。

アラビア数字を使う場合にも「全角数字」と「半角数字」の違いもありますので、そこにも注意しましょう。

 

ただし、その場合でも「漢数字も含めて一つの単語になっている場合」は、漢数字を使っても良いでしょう。

「一人」「五臓六腑」「三日天下」みたいなやつですね。

人称を統一する

人称とは、文章を書く際の視点のことです。

大まかに言って「一人称」「二人称」「三人称」に分けることができます。

それ以外にも「三人称 一元視点」や「三人称 神視点」「三人称 多元視点」というくくりもありますが、これは人によって解釈が変わってきたりします。

以前に人称については記事にしています。

要は、映画で言うところのカメラをどこに持ってくるのか? ということですね。

この「どこから見ているか」というのが、説明もなしにコロコロ変わってしまうと、読者は困ってしまいます。

Aさんの視点だと思っていたら、いつの間にかBさん視点になっていた……。

こんなことが繰り返されると、読む方は混乱してしまいますよね。

 

恐らく一番簡単なのは「三人称 一元視点」だと思います。

次が「一人称」かな?

どちらも視点が固定されているので、書く際に悩まなくて済みますよね。

複数の視点から書きたい際には「段落」もしくは「投稿小説の一話」などの区切りを利用すると良いでしょう。

段落の場合は、少し多め(3行程度)に改行すると、もっと分かりやすくなりますね。

もしくは間に「記号」などを入れて「視点が変わりますよ〜」というのを伝える手法は、書籍でもあったりします。

句読点は適切に使う

句読点とは、句点「。」と読点「、」のことですね。

まず句点。

句点は文章の終わりに付けます。

最近、SNSなどでは句点をつけないこともありますが、小説では必要です。

先程も言いましたが「」の最後には必要ありません。

また、感嘆符(!や?)で文章が終わる場合にも、省略できます。

 

次に読点。

読点は難しいですね。

主に「文章の意味の区切り」や「息継ぎのタイミング」で使われる事が多いと思います。

コツとしては「小説を書いているときはあまり意識しないでOK。推敲時に再配置する」というのが簡単なような気がします。

どうしても小説を書いているときは「先へ先へ」といくので、読点が少なかったり、逆に多すぎたりするんですよ。

ですので、ザッと書いてから読み返す段階で打ち直していけばOKだと思います。

 

またあまりに読点が多すぎる場合は「」や()などを使うと良いかも知れません。

この記事内でもそれらを使って読点を省略している部分がありますよね。

三点リーダー、ダッシュは2文字でワンセット

三点リーダー「……」とダッシュ「――」は2つ続けて記述します。

三点リーダーは「・」を3つ入力して変換することで入力できます。「てん」を変換でもできると思います。

ダッシュは「だっしゅ」を変換で出てくると思います。

全角の「・・・」や、一時期ネットでよく見た「。。。。」は小説では使わない方が無難です。

 

ちなみに三点リーダーとダッシュの違いですが、三点リーダーは「会話などの余韻を残す場合」に使われます。

「そんなバカな……」みたいな感じですね。

「そんなバカな――」こちらは、「バカな」の後に、すぐ次の行動、言葉が重なる場合に使用します。

「そんなバカな――」「うるさいっ!」

こんな感じですね。

また、注釈のような使われ方もします。

はっきりとは見えないが、相当若そうな――恐らく10代前半といったところか――少女だった。

ぼくときみのダンジョン再建記』第2話より

こちらは主に地の文になると思います。上の文は

はっきりとは見えないが、相当若そうな少女だった。恐らく10代前半といったところか。

と、変えることも可能です。

この辺りは作者次第、というところですね。

どっちでもよい文法

昔から「こうあるべし」と言われてきていますが、最近ではあまり重要視されていないと思われる文法です。

感嘆符「!」「?」の後ろは1文字分開ける

「それに、言うほど寒くはないだろう? 現に私は平気だし」

「あんた、それ。着込みすぎだからじゃないの?」

「むっ、魔王のローブを侮辱するか? これは先代から受け継がれた由緒正しいローブで、代々魔王は……って、こら、やめろ! やめて! 脱がすな」

ぼくときみのダンジョン再建記』第5話より

感嘆符「!」や「?」「!?」の後ろは一文字開ける、というのが一応文法の基本にはなっています。

しかし、最近では詰めて書かれる方もいたりします。

個人的には開けるようにしていますが、ちょっと微妙になってきているのかなぁという気がします。

ただ「」の最後にくる感嘆符の後ろは1文字開けなくても良いことになっています。

「着込み過ぎじゃないの? 」ではなく「着込み過ぎじゃないの?」ですね。

会話文内での改行

会話文内「」の中では、改行しないとなっていますが、これは作風によって変わることがあります。

凄く長い会話を書く場合、細かく「」で区切っていく場合と、「」内で改行する場合があります。

これはもう完全に作者次第なので、お好きなようにという感じです。

ただ、あまりに短い会話を改行しまくると、これまた読みにくくなります。

「ほら、私が言った通りじゃない。

夏休みは永遠じゃないのよ!

だから、あれほど宿題は早めにやろうね、って言ったのに」

こんな感じだと、ちょっと戸惑ってしまうかもしれません。

とは言え、これも作者と作品によるわけで、決してダメなわけじゃありません。

まとめ

本当はまだまだあるのですが、ちょっと長くなりすぎましたで、この辺にしておきます。

冒頭でも言いましたが「文法とは、書き手と読み手の間のルール」です。

最終的には「読めればOK」なわけですが、読み手の多くに不快感を与えてしまうような書き方は、小説の価値を下げてしまいかねません。

 

縛られ過ぎる必要もありませんが、最低限だけ覚えて置けばOKでしょう。

 

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。

今日のは長かったですね(笑)。

その他の小説関連の記事は「小説講座」にまとまっていますので、お時間があればご覧下さいね。