過程を公開しながら小説を書く【第1回:ボツにした小説を振り返る】

2019年6月5日小説LABO創作公開,執筆考察

本記事は、最近再開した「執筆考察」の中のひとつのシリーズものになります。

小説を書く過程を書く。

それは小説家(※)にとっては恥ずかしいものなのかもしれません。
※)小説家という呼称については、「始めにお読み下さい」のこちらを参照下さい。

まるで自分の頭の中を覗かれているようで、気恥ずかしく思ってしまいますよね。

それでも今回「一から小説を書く過程を書いてみよう」と思った理由は2つあります(前置きで本編とは関係ありませんので、次の項まで飛ばして頂いても支障はありません)

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本連載の目的

ひとつ目は当然「TEXT FIELDという『小説を書く人を応援するサイト』としては、そういうコンテンツも必要だろう」というブログ的側面。

「これでブログのPV増やすやでぇ、ぐへへ」といういやらしい思いは無きにしもあらずですが(あるんかい)それよりも以前から話していたように「小説を書く人のために何ができるのかな?」と考えた結果、そういうのもあっていいのかもしれないと思ったというのが大きな要因です。

もちろん「いや書籍化されたプロ作家ならともかく、お前のような底辺作家の小説の作り方など聞いても何の得にもならんわ」という見方もあるのかもしれません。

ただ「商業ではないからこそ、赤裸々に書ける」と思いますし「プロではないからこそ、反面教師的な使い方もできるのではないか」とも思います。

なので本連載の正しい使い方は「人の創作を見て、我が創作直せ」になります。

あくまでも「創作しながら思っていることを赤裸々に書いていく」ので、かなり脈略なく前後の整合性なく有益でないものになる可能性があります。

「しろもじ、馬鹿だなぁ」とケラケラ笑ってお読みになるのもよろしいかと思いますが「しろもじ、それは違うぞ」みたいな、気付きのきっかけがご提供できれば幸いだと思っています。

ふたつ目には「それを敢えて書くことによって、自分のためにもなるんじゃないか?」と思ったこと。

創作にはたくさんの方法があり、大きく分けると「プロットなどを細かく設定して書く方法」と「頭の中に浮かんできたものを書く」という方法があると思います。

後者の場合には「感性」に頼るところが大きいので、敢えて言語化したとしてもそれが有益なのかどうかは分かりません。

でも前者の場合は「方法論」として考えることができそうなので、文章として残すことで今後の役に立つこともあるのではないか、と思ったわけです(役に立つとは言っていない)。

これまでも、小説を書く上で思ったことなどは「小説投稿記」などにも書いてきました。

ただ如何せんあれは「その場限り」の思ったことなので、やや乱雑で整理されていません。

またその投稿記で書いた「創作のチェックリスト」を将来作るときの、たたき台にもなるんじゃないかと密かに期待しています。

グダグダと長い前置きを書きましたが、そんな感じで書いていきたいと思います。

あと「ここで取り上げる小説」について少しだけ。

以前から投稿記でお話していた「ラブコメもの」になります。

12話まで既に書いていたのですが、はっきり言って「自分でも何が面白いのか分からなくなってきた」ので、改めて書き直すことにします。

また同作品は「どこかの賞に出す予定はない」というのも取り上げる理由です。

何せ、本当に赤裸々に書く予定なので、賞やコンテストに出す作品では流石にそういうことはやりにくいからですね。

では、今度こそ本当に本編に参ります。

今回のお題は「ボツにした小説を振り返る」です。

ボツにした小説を振り返る

まず書いてた小説(12話まで書いたヤツ)をお見せしようと思ったのですが、なぜかテキストファイルがHTTPエラーとなりアップロードできません……。

原因究明したいところですが時間がかかりそうなので、今回は端折ります(すみません)。

原因が分かったのでアップロードしておきます。こちらからどうぞ。汎用性を考慮しテキストファイルになっています。「ーーーー」が各話の区切りになります。22,000字ほどあります。念のため書いておきますが、個人での閲覧以外のご利用はお断りしておきます。

※UTF-8で保存しているのですが、iPhoneなどの一部環境では文字化けしているみたいです。他の形式でUpしてもいいのですが、そこまで重大なものではないので今回は許してください。

ざっと概要だけ書いておくと

大学に進学した幼馴染。

中学時代までは仲良かった二人。小さいころには男の子が女の子と「将来結婚しよう」と約束なんかもしたりしていた。

だが、高校は別々になり次第に疎遠に。

大学に進学し一人暮らしを始めることになった二人は、同じマンションで再び出会う。

ふたりの両親は、小さい頃のふたりの約束を覚えててすっかりその気になってしまい、勝手に同居生活をさせるように仕組んでいた。

狼狽しつつも、一つ屋根の下で暮らすことになった二人だが……。

改めて書くと「お前幼馴染好きだなぁ」とか「約束も好きだよなぁ」と、我ながら突っ込んでしまいそうになりますね。

「面白くない」と思った理由はいくつかあるのですが「キャラクターが普通すぎる」「序盤の展開が遅すぎる」というのが大きな部分。

「キャラクターが普通過ぎる」というのは、この主人公の二人のこと。

男の子は「頭はいい、合理主義者、クール(無口)、掃除は好き」女の子は「少しおバカ、大雑把、明るい、料理好き」という設定でした。

また男の子は「他人に興味が持てないこと」女の子は「思ったことを何でも口にしちゃうこと」をそれぞれの悩みとして持っています。

こんな感じで性格の全く違うふたりを主人公にして、自分の欠点を相手が良い点として持っている、つまり男の子からすれば女の子は「社交的で人との繋がりを大切にしている」女の子からすれば男の子は「むやみに思ったことを口にせず、人を傷つけない」という部分がある構造にしていたということです。

どちらの悩みも(そして特徴も)「人との関係」に基づくものであり、多くの人が共感してくれそうなものではないかと。

個人的には、ややテンプレ的ではありますが、ここまでは悪くはなかったと思っています。

ただ如何せんあまりに普通。

現代が舞台の作品ですから、あまりに突飛なキャラクターにはしにくいものです。

これが「一般文芸系」の公募などに応募するのであればよかったのかもしれません。

でもWebで出すにはちょっと平凡過ぎる気がします。

これまでいくつか現代ものを書いてきましたが、それを後日読み返していつも思うのが「キャラクターが普通過ぎる」ということで、再び今回も同じことをやってしまったというわけです。

もうひとつの問題点「序盤の展開が遅すぎる」。

これも過去作で何度も思ったことです。

今回はWritoneに投稿しようと思って「男の子目線」と「女の子目線」のふたつの話を交互に繰り返していく形を取っています(1話が女の子一人称視点、2話が男の子一人称視点、以降繰り返し)。

やや異なりますが、作りとしては以前カクヨムに投稿した「家族編集部」というのに似てます。

音読してもらうという意味合いで「1話=2,000字程度」で書いてたのですが、それでもふたりが同居生活を始めるまでに6話(≒12,000字)もかかっています。

これは正直に言うと「作者(私)のまどろっこしい性格」というのが如実に出ているのではないかと(笑)。

もちろん小説というのはあらましを書くだけでは成立しませんから、例えば異世界ものの戦闘シーンでも

「僕は剣を振り下ろした。
 敵にダメージ。
 敵を倒した。
 薬草を手に入れた
 レベルが上った」

みたいなのでは(当然)ダメですよね。

ここで言いたかったのは「今書くべきでないことを書いていた」ということです。

詳細に言えば「ふたりのこれまでの関係は?」とか「どうして同居することになったの?」とか、そういう部分を序盤に書きすぎたというわけです。

「書店でお金を出して買った書籍」というのは「折角買ったから」ということで、序盤がつまらなくても読み進めて行くことが多かったりしますよね。

でもWeb小説の場合(あくまでも自分の読み方ですが)1話、2話で「つまらない、意味が分からない」などの「小さな壁」があると、その時点で止めてしまうことが多いように思われます。

色々な理由があるとは思われますが、やはり「日々多くの小説がアップロードされている中で、ひとつの小説の面白くなる時点まで待つことができない」というのがあるのかなぁと。

なので「できれば1話」「少なくとも2話」までに「あ、これ面白そうだ」というシチュエーション、つまり「その小説の最もウリな部分」を登場させた方がいいではないかと思うんですよね。

1話≒3,000字だと少しキツイとも思いますので「1話5,000字」か「1話2,000字、2話3,000字」くらいの構成が良さげでしょうか?

この小説のウリとしてはジャンルが「ラブコメ」ですから、男の子と女の子のラブな話でありながらも、面白いコメディ要素というのが、それに当たるのだと思われます。

つまり二人の掛け合いで「面白さ」というのを序盤(5,000字辺り)までに登場させる必要があったのかな、と思います。

まとめ

本当は今回の記事で、新しく書く小説の「大まかな構想を考える」という部分まで書こうと思っていたのですが、如何せん長くなりすぎました。

文中でも触れていた「まわりくどい性格」というのが、いかんなく発揮された記事になったのだと思われます。

とは言え、今回の連載で取り上げる「ラブコメもの」としては、ボツになったものを如何に上手く改良していくかの部分が重要になってきますので、ある程度は仕方がないのかもしれません。

ということにしておきます。

次回は上に書いたように「大まかな構想を考える」ということで、近日中にはアップしたいと思っています。

蛇足になりますが、ふと気になったことを最後に書いておきます。

文中にも書きましたが小説の作り方としては「設計して書く方法」と「頭の中に浮かんだものを書く方法」というのがあると思われます。

書籍を出版されている専業作家さんにも、後者の方法で小説を書くという方は多かったりします。

私はこれを否定しているわけではありません(現に今連載中の『きみとぼくのダンジョン再建記』は、この手法で書き始めました)。

ただ、その手法では「書いた小説がたくさん読まれればOK」となりますが「読まれなかった場合にどうしていいのか分からない」ということもあります。

また「何作か書いている内に、経験則としていつの間にか身についた能力」というのもあるのかもしれません。

TEXT FIELDでは「その辺りを分かりやすく分析したい」と思っています。

決して「これをやれば絶対にヒットする小説を書ける」というわけではありませんが、そのきっかけづくりだけでもお手伝いできたらなぁ……と思う次第です。