ユートピア【湊かなえ|集英社文庫】

2018年10月11日読んでレビュー湊かなえ, 集英社文庫

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後味は悪い。登場人物も好きになれない。けれど……

本を読み終えたとき思ったことは「やっと終わった。よかった」というものでした。

小説に何を求めるかで違ってくるのだとは思いますが、この小説ではキャラクターたちに同情することはできませんでした。

後半に差し掛かり、車椅子のボランティアが危機に陥る段階で「全てが明らかになって、登場人物たちが糾弾されるのかな?」とさえ思いました。

 

そういうある種の期待を持ちながら読んでいるとき、自分の心の暗さにも気づきます。

 

そうか、私も彼女たちも同じなんだ。

人の不幸を少しだけ望んでみたり、評価されている人たちの足を引っ張りまではしないけれど少し妬んでみたり。

そういう感情が自分にもあるんだ。

だから、彼女たちのことを好きにはなれないけれど、理解はできる。

そういう思いが心の中に湧き上がってきたことは、その人の悪さを表すものではなく、人というものが本来持っているものだから。

 

そんなことに思いが至るというのは、小説ではあまりない体験かもしれません。

小説に登場する人物たちは、理想の自分の姿でありなら、どこか非現実的でもあります。

 

難解な事件を解決してしまうキャラクター。

なぜかたくさんの異性からモテモテのハーレムキャラクター。

凄い能力を持っていて、敵をバッタバタと倒せるキャラクター。

それなのに謙虚で性格の良いキャラクター。

 

そんな「自分じゃない。周りにもいない」キャラクターに憧れたり同化したりするのが、小説の一面だったりします。

でも、そんな人はなかなかいません。

大抵の人は性格に難があったり、能力が足りなくて他人を妬んだり、そういう自分が大嫌いだったりします。

それを小説に書くというのは、恐らく相当難しい行為なんだと私は思います。

 

本作のラストは凄いハッピーエンドでもなければ、恐ろしいバッドエンドでもありません。

一つの謎が解け(読者だけに)、登場人物たちが新しい生活へと旅立っていくだけで、報われたりはしません。

そう言う意味では「後味が悪い」ということになるのですけれど、私はこの方がよかったのだと思います。

登場人物たちが報われた結果を描いたり、逆に懲らしめららたりするラストよりは、余程この作品らしい終わり方だったと思います。

ユートピアとは

私たちはついつい昔を思い出して「あの頃は良かったなぁ」と思いがちですが、その今ですら十年後には「あの頃は良かった」に変わるかもしれません。

結局の所、人にとってのユートピアなどというのはその人の心の中にしかなく、今を楽しめるのも苦しくするのも本人次第という部分が大きいのだと思います。

他者に依存しすぎると「これが悪い!」「もうちょっとなんとかして欲しい」という気持ちばかりが増えてくるものです。

 

自分の外にあるものに期待するのではなく、自分ができること、すべきことにこそ、自分の価値があるのだ。

そんな感じでしょうか。

かなり偉そうな物言いになってしまいましたが(笑)。

 

というわけで湊かなえさん著の『ユートピア』は、小説を書く方にはおすすめの1冊になっています。

色々な本に触れて、色々な書き方を知るというもの大切な勉強ですからね。

先日記事にしたカクヨムで連載中の『ブロードキャスト』も合わせて読むと良いかもしれません。

 

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